近年、集中豪雨やゲリラ豪雨と呼ばれる局地的な大雨が増加しており、都市部でも深刻な浸水被害が相次いでいます。
かつては「マンションは災害に強いから安心」と考えられていましたが、その常識を覆す出来事が2019年に起きました。
台風19号によって武蔵小杉のタワーマンションが被災し、地下の電気設備が浸水したことで長期間にわたる停電と断水に見舞われたのです。
この事例をきっかけに、マンションにおける浸水対策の重要性が広く認識されるようになりました。
とはいえ、「具体的に何から手をつければよいのかわからない」「どんな対策が効果的なのか知りたい」という方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、マンションが抱える浸水リスクの実態から、ハザードマップを活用したリスク確認の方法、今すぐ始められる具体的な対策、さらには水害に強いマンションの選び方まで、体系的に解説していきます。
すでにマンションにお住まいの方はもちろん、これから購入を検討している方にも役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までお読みいただき、ご自身やご家族の安全を守る参考にしてください。
マンションにおける浸水リスクとは

マンションは鉄筋コンクリート造で建てられていることが多く、木造住宅と比較すると災害に強いイメージがあります。
確かに地震に対しては耐震構造や免震構造が採用されており、建物としての堅牢性は高いといえるでしょう。
しかし水害に関しては、必ずしも万全とはいえないのが実情です。
むしろマンション特有の構造が、浸水被害を拡大させてしまうケースも少なくありません。
こうしたリスクを正しく理解することが、効果的な対策を講じるための第一歩となります。
ここからは、近年の水害被害の状況と、マンションで浸水しやすい場所について詳しく見ていきましょう。
近年増加する水害被害の実態

日本では気候変動の影響により、大雨の頻度と強度が年々増加しています。
1時間あたり50ミリを超える豪雨の発生回数は、1970年代と比較して約1.5倍に増えているというデータもあり、この傾向は今後さらに強まると予測されています。
こうした気象状況の変化に伴い、都市部でも深刻な浸水被害が多発するようになりました。
その代表的な事例が、2018年7月に発生した西日本豪雨です。
この豪雨では全国で約2万9,000戸が浸水被害を受け、そのうち約1万9,000戸が内水氾濫によるものでした。
内水氾濫とは、河川の堤防が決壊して水があふれる「外水氾濫」とは異なり、大雨によって下水道や排水設備の処理能力を超えた雨水が地表にあふれ出す現象を指します。
アスファルトやコンクリートで覆われた都市部では、雨水が地面に浸透しにくいため、この内水氾濫が起きやすい環境にあるのです。
さらに記憶に新しいのが、2019年10月の台風19号による被害です。
この台風では神奈川県川崎市にある武蔵小杉のタワーマンションが甚大な被害を受けました。
地下に設置されていた電気設備が浸水したことで建物全体が停電に陥り、エレベーターや上水道が機能を停止したのです。
復旧までには長期間を要し、多くの住民が不便な生活を強いられることになりました。
災害に強いと思われていたタワーマンションでさえも、水害には脆弱であることをこの事例は明らかにしたのです。
以下の表は、近年発生した主な水害とマンションへの影響をまとめたものです。
| 発生年月 | 災害名 | 主な被害状況 |
|---|---|---|
| 2018年7月 | 西日本豪雨 | 約2万9,000戸が浸水、うち約1万9,000戸が内水氾濫による被害 |
| 2019年10月 | 台風19号 | 武蔵小杉のタワーマンションで地下電気設備が浸水し長期停電 |
| 2020年7月 | 令和2年7月豪雨 | 九州地方を中心に甚大な浸水被害が発生 |
このように、マンションにおける水害被害は決して他人事ではありません。
まずはご自身のマンションがどのようなリスクにさらされているのか、しっかりと把握しておくことが大切です。
マンションで浸水しやすい場所

マンションには構造上、どうしても浸水被害を受けやすい場所が存在します。
これらの場所を事前に把握しておくことで、効果的な対策を講じることが可能になるでしょう。
特に注意が必要な浸水箇所として、以下の場所が挙げられます。
- 地下駐車場および機械式駐車場
- 1階部分のエントランスや住戸
- 地下に設置された電気室や受水槽などの重要設備
- エレベーターピット(エレベーターの最下部にある空間)
- 通信設備や水道設備
これらの場所が浸水すると、建物全体の機能に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
たとえば地下の電気室が浸水すれば、建物全体が停電してしまいます。
その結果、エレベーターは動かなくなり、高層階に住んでいる方は階段での移動を余儀なくされるでしょう。
さらに上水道のポンプも停止するため、蛇口から水が出なくなってしまいます。
加えて排水設備が被害を受ければ、トイレの使用にも支障が生じることになります。
つまりマンションにおける浸水被害は、たとえ自分の住戸が浸水していなくても、生活全体に大きな影響を与えるのです。
地下・1階部分の危険性
マンションにおいて最も浸水リスクが高いのは、地下および1階部分です。
多くのマンションでは限られた敷地を有効活用するために、駐車場や設備室を地下に設置しています。
また都市部の高さ制限がある地域では、1階部分を半地下構造にして階数を確保しているケースも見られます。
こうした構造は通常時には問題ありませんが、大雨の際には真っ先に浸水被害を受ける危険性をはらんでいます。
特に問題となるのが、地下に設置された電気室や配電盤です。
多くの専門家が指摘しているように、分譲時から電気室が1階以上に設置されているタワーマンションは、ほとんど存在しないのが現状です。
これは地上階をできるだけ住戸や共用部に充てたいという事情や、設備を地下に集約した方が建築コストを抑えられるという理由によるものです。
しかしながら、地下に重要設備が集中していることは、水害時に大きなリスクとなります。
電気設備が浸水すると復旧には数週間から数か月かかることもあり、その間は建物全体の機能が大幅に制限されてしまうのです。
1階住戸についても同様の注意が必要で、道路面より低い位置にエントランスがある場合は雨水が流れ込みやすくなります。
特に半地下の住戸では、短時間の集中豪雨でも床上浸水に至る危険性があるため、十分な警戒が求められます。
以下は、地下・1階部分の主なリスクをまとめた表です。
| 場所 | 主なリスク | 被害が及ぶ範囲 |
|---|---|---|
| 地下電気室 | 停電による建物機能の停止 | 建物全体 |
| 地下受水槽 | 断水による生活への支障 | 全住戸 |
| 1階エントランス | 出入り困難、避難経路の遮断 | 全住民 |
| 半地下住戸 | 床上浸水による財産被害 | 該当住戸 |
機械式駐車場のリスク
マンションの駐車場には平面式と機械式の2種類がありますが、都市部のマンションでは敷地の制約から機械式駐車場が採用されているケースが多く見られます。
機械式駐車場は限られたスペースで多くの車両を収容できるメリットがある一方で、水害時には大きなリスクを抱えています。
地下に設置された機械式駐車場が浸水した場合、停めていた車両が水没する被害が発生します。
車両が水没するとエンジンや電子機器に深刻なダメージを受け、修理不能となることも珍しくありません。
被害額は1台あたり数百万円に及ぶこともあり、マンション全体で見れば数千万円規模の損害となる可能性があるのです。
機械式駐車場には排水ポンプが設置されていますが、その排水能力には限界があります。
集中豪雨のように短時間で大量の雨水が流入する状況では、排水が追いつかずに浸水してしまうことがあるのです。
また安全上の理由から、雨が強くなると操作盤が自動的に制御され、車両を移動させることができなくなる場合もあります。
こうした事態を避けるためには、気象情報をこまめにチェックし、大雨が予想される場合は早めに車両を安全な場所へ移動させることが重要です。
機械式駐車場を利用している方は、以下の点を事前に確認しておきましょう。
- 駐車場の排水ポンプの能力と点検状況
- 大雨時の車両移動に関するルール
- 浸水被害に対応した自動車保険への加入状況
2階以上でも起こりうる被害
「浸水の心配がない2階以上の住戸であれば安心」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし実際には、2階以上に住んでいても水害の影響を全く受けないわけではないのです。
まず考えられるのが、ベランダからの浸水です。
ベランダには排水溝が設けられていますが、落ち葉やゴミで詰まっていたり、排水能力を超える大雨が降ったりすると、雨水が室内に浸入してくることがあります。
特に大きなベランダがある住戸では、排水が追いつかずに水がたまりやすい傾向があります。
次に問題となるのが、建物全体の機能停止による影響です。
先述したように地下の電気設備が浸水すると、建物全体が停電してしまいます。
停電が起きると、以下のような被害が連鎖的に発生することになります。
- エレベーターが停止し、高層階への移動が困難になる
- 給水ポンプが動かず、断水が発生する
- 排水ポンプも停止し、トイレの使用に支障が出る
- 共用部の照明が消え、夜間の移動が危険になる
高層階に住んでいる方にとって、エレベーターが使えなくなることは特に深刻な問題です。
階段での移動を余儀なくされ、とりわけ高齢者や小さなお子さんがいるご家庭では日常生活に大きな支障をきたすことになります。
断水についても同様で、マンションではポンプを使って上層階まで水を送っているため、停電と同時に断水が起きてしまいます。
最近では非常用電源を備えたマンションも増えていますが、まだまだ少数派であり、多くのマンションでは停電と断水が同時に発生するリスクがあるのです。
このように2階以上の住戸であっても、水害による被害から完全に逃れることは難しいといえます。
| 被害の種類 | 2階以上への影響 | 対策の例 |
|---|---|---|
| ベランダ浸水 | 室内への雨水侵入 | 排水溝の定期清掃 |
| 停電 | エレベーター停止、家電使用不可 | 非常用電源の確認、懐中電灯の備え |
| 断水 | 飲料水・生活用水の不足 | 備蓄水の確保 |
| 排水不能 | トイレ使用困難 | 簡易トイレの備蓄 |
ハザードマップで浸水リスクを確認する

マンションの浸水対策を考えるうえで、まず取り組むべきなのは自分のマンションがどの程度のリスクにさらされているかを把握することです。
そのための有効なツールが、自治体が作成しているハザードマップです。
ハザードマップは過去の災害履歴や地形データをもとに、将来起こりうる災害の想定被害を地図上に示したもので、水害に関しては主に「洪水ハザードマップ」と「内水氾濫ハザードマップ」の2種類があります。
それぞれ想定している災害のメカニズムが異なるため、両方を確認しておくことが大切です。
ここからは、それぞれのハザードマップの見方と、自宅マンションのリスク判定方法について解説していきます。
洪水ハザードマップの見方
洪水ハザードマップは、河川の堤防が決壊したり水が堤防を越えてあふれたりした場合に、どの地域がどの程度浸水するかを示した地図です。
国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」や、各自治体のホームページから閲覧することができます。
洪水ハザードマップを見る際には、以下のポイントに注目しましょう。
- 想定浸水深(浸水した場合の水深)
- 浸水継続時間(水が引くまでにかかる時間)
- 避難場所と避難経路
- 家屋倒壊等氾濫想定区域
想定浸水深は色分けで表示されていることが一般的で、たとえば黄色は0.5メートル未満、オレンジ色は0.5~3メートル、赤色は3メートル以上といった形で区分されています。
自分のマンションがどの色のエリアに該当するかを確認し、想定される浸水の深さを把握しておくことが重要です。
想定浸水深が0.5メートル以上のエリアでは1階部分や地下への浸水被害が想定され、3メートル以上のエリアでは2階部分まで浸水する可能性があるため、より慎重な対策が必要になります。
洪水ハザードマップの確認方法をまとめると、以下のようになります。
| 手順 | 確認内容 |
|---|---|
| 1 | ハザードマップポータルサイトにアクセス |
| 2 | 「洪水」を選択し、自宅周辺の地図を表示 |
| 3 | 想定浸水深の色分けを確認 |
| 4 | 浸水継続時間を確認 |
| 5 | 最寄りの避難場所と避難経路を確認 |
内水氾濫ハザードマップの見方
内水氾濫ハザードマップは、洪水ハザードマップとは異なるメカニズムの水害を想定しています。
内水氾濫とは大雨により下水道や排水設備の処理能力を超えた雨水が地表にあふれ出す現象で、河川から離れた場所でも発生する可能性があり、都市部では特に注意が必要な水害です。
洪水は河川の近くで発生するイメージがありますが、内水氾濫は排水インフラが整備されている都市部でも起こりえます。
むしろアスファルトやコンクリートで覆われた都市部は雨水が地面に浸透しにくいため、内水氾濫のリスクが高いともいえるのです。
ただし内水氾濫ハザードマップは、洪水ハザードマップと比べて整備が進んでいない自治体もあります。
お住まいの自治体で公開されているかどうか、まずは確認してみてください。
公開されていない場合は、自治体の防災担当窓口に問い合わせることで、過去の浸水履歴などの情報を得られる場合があります。
内水氾濫ハザードマップを確認する際のポイントは以下のとおりです。
- マンション周辺の想定浸水深
- 周辺道路の冠水リスク
- 下水道の排水能力
内水氾濫は短時間の集中豪雨で発生することが多いため、警報が出てから対策を始めても間に合わないケースがあります。
そのため事前に想定浸水深を把握し、必要な備えをしておくことが極めて重要なのです。
自宅マンションのリスク判定方法

洪水ハザードマップと内水氾濫ハザードマップの両方を確認したら、次は自分のマンションがどの程度のリスクにさらされているかを判定しましょう。
リスク判定を行う際には、以下の項目をチェックすることをおすすめします。
- 想定浸水深は何メートルか
- 浸水継続時間はどのくらいか
- マンションの1階床面は道路より高いか低いか
- 地下に重要設備(電気室、受水槽など)があるか
- 機械式駐車場が地下に設置されているか
想定浸水深が0.5メートル以上で、かつ地下に重要設備がある場合は、浸水時に建物全体の機能が停止するリスクが高いといえます。
また1階床面が道路より低い場合は、想定浸水深がそれほど深くなくても浸水被害を受けやすくなります。
より詳細にリスクを調べたい場合は、国土交通省が公開している「浸水ナビ」というツールも活用できます。
浸水ナビでは特定の地点における想定浸水深や浸水継続時間を、より詳細に調べることが可能です。
リスク判定の結果は、以下のような形で整理しておくとよいでしょう。
| チェック項目 | 自宅マンションの状況 | リスクレベル |
|---|---|---|
| 想定浸水深 | ○○メートル | 高・中・低 |
| 浸水継続時間 | ○○時間 | 高・中・低 |
| 1階床面の高さ | 道路より高い/低い | 高・中・低 |
| 地下の重要設備 | あり/なし | 高・中・低 |
| 地下駐車場 | あり/なし | 高・中・低 |
このようにリスクを可視化することで、どのような対策が必要かを具体的に検討しやすくなります。
今すぐ始められるマンションの浸水対策

ハザードマップで浸水リスクを確認したら、次は具体的な対策に取り組んでいきましょう。
マンションの浸水対策は、大きく分けて「個人でできる備え」「管理組合・住民間でできる対策」「建物設備における対策」の3つに分類できます。
すでに建築されているマンションでは建物自体の構造を変更することは難しいですが、ソフト面での対策は今すぐ始めることができます。
それぞれの対策について、詳しく見ていきましょう。
個人でできる備え
マンションに住んでいる方が個人で取り組める浸水対策には、さまざまなものがあります。
建物全体の対策は管理組合を通じて行う必要がありますが、自分自身の身を守るための備えは今日からでも始めることができます。
特に重要なのは「防災グッズの準備と定期点検」と「火災保険・水災補償の見直し」の2点で、これらは費用をかけずに、あるいは比較的少ない費用で実施できる対策です。
防災グッズの準備と定期点検
浸水被害が発生した場合、停電や断水により日常生活が大きく制限されることは先述したとおりです。
こうした事態に備えるためには、防災グッズを事前に準備しておくことが重要になります。
水害時に役立つ防災グッズには、以下のようなものがあります。
- 飲料水(1人あたり1日3リットル×最低3日分)
- 非常食(調理不要なもの)
- 懐中電灯と予備の電池
- 携帯ラジオ
- モバイルバッテリー
- 簡易トイレ
- 救急用品
- 現金(停電時はキャッシュレス決済が使えないため)
- 貴重品のコピー(保険証、通帳など)
ただしこれらの防災グッズは、購入して保管しておくだけでは不十分です。
いざという時にすぐに使えるよう、定期的に点検することが大切になります。
専門家の中には「防災グッズを備えて終わりにしてはいけない」と指摘する方もいます。
たとえば発電機を導入したとしても、試運転をせずに倉庫にしまったままでは、いざという時に使用できない可能性があるからです。
また非常食には賞味期限があるため、定期的に確認して入れ替える必要もあります。
最低でも年に1回は防災グッズの点検を行い、不足しているものがあれば補充するようにしましょう。
以下の表は、防災グッズの点検チェックリストです。
| 点検項目 | 確認内容 | 点検頻度 |
|---|---|---|
| 飲料水 | 賞味期限、必要量の確保 | 年2回 |
| 非常食 | 賞味期限、必要量の確保 | 年2回 |
| 懐中電灯 | 電池残量、点灯確認 | 年2回 |
| モバイルバッテリー | 充電状態の確認 | 月1回 |
| 簡易トイレ | 必要数の確保、使用期限 | 年1回 |
火災保険・水災補償の見直し
マンションにお住まいの方の多くは、火災保険に加入しているかと思います。
しかし火災保険に加入しているからといって、水害による被害が必ず補償されるわけではありません。
水害に対する補償は「水災補償」や「水災特約」として別途付帯する必要があるケースが一般的なのです。
実際、2019年の台風19号では火災保険には加入していたものの、水災特約を付けていなかったために保険金が支払われなかったマンションが複数あったと報告されています。
「保険に入っているから大丈夫」と安心せずに、補償内容を今一度見直すことをおすすめします。
火災保険の水災補償を確認する際のポイントは以下のとおりです。
- 水災補償が付帯されているか
- 補償の対象となる被害の条件(床上浸水、損害割合など)
- 補償される金額の上限
- 地下駐車場の車両は補償対象外であること
特に注意すべきは、補償の対象となる条件です。
多くの保険では床上浸水または地盤面から45センチメートルを超える浸水、もしくは損害割合が30%を超える場合に保険金が支払われる仕組みになっています。
つまり浸水の「深さ」が基準に満たなければ、設備が浸水してしまっても保険はおりないことがあるのです。
またマンションの共用部を対象とする総合保険では、個人の車両は補償対象になりません。
地下の機械式駐車場に車両を停めている方は、ご自身の自動車保険に水害に対する補償が付いているかも、あわせて確認しておきましょう。
管理組合・住民間でできる対策
マンションの浸水対策は、個人の備えだけでなく管理組合や住民間での取り組みも欠かせません。
特に建物設備に関する対策や災害時の避難体制づくりは、管理組合が主導して進める必要があります。
設備の浸水対策状況を確認する
お住まいのマンションでどのような浸水対策が講じられているかを確認することは、リスク把握の第一歩です。
管理組合や管理会社に問い合わせて、以下の項目について確認してみましょう。
- 地下の電気室や配電盤の設置場所と浸水対策の有無
- 止水板(防水板)の設置状況
- 排水ポンプの性能と点検状況
- 下水道からの逆流防止弁の設置状況
- 土のうや水のうの備蓄状況
止水板とは建物の開口部からの水の侵入を防ぐために設置するパネルのことで、水害対策の基本的な手段のひとつです。
エントランスや駐車場入口などに止水板を設置することで、建物内部への浸水を防ぐことができます。
もし止水板が設置されていない場合は、管理組合を通じて導入を検討するよう働きかけることも有効です。
管理組合に問い合わせることで住民側からの防災意識の高さをアピールすることにもなり、対策が進みやすくなる可能性があります。
設備の浸水対策状況を確認するためのチェックリストを以下に示します。
| 確認項目 | 確認方法 | 備考 |
|---|---|---|
| 電気室の設置場所 | 管理組合または管理会社に問い合わせ | 地下にある場合は浸水リスクが高い |
| 止水板の有無 | 現地確認または管理会社に問い合わせ | 未設置の場合は導入検討を提案 |
| 排水ポンプの性能 | 管理会社に問い合わせ | 点検記録の確認も依頼 |
| 逆流防止弁 | 管理会社に問い合わせ | 内水氾濫対策として重要 |
| 土のうの備蓄 | 現地確認または管理会社に問い合わせ | 必要数が確保されているか |
防災訓練と避難計画の策定
浸水対策の設備や備品を整えたとしても、それだけでは十分とはいえません。
いざという時に適切な行動をとれるよう、日頃から訓練しておくことが何よりも大切なのです。
過去には浸水想定区域内のマンションで、分譲直後に豪雨に見舞われ、あらかじめ設置されていた止水板を使おうとしたものの鍵が見つからず適切に対応できなかったという事例もあります。
このような事態を避けるためには、定期的な防災訓練を実施して住民全員が防災設備の使い方を把握しておく必要があります。
防災訓練で確認すべき内容には、以下のようなものがあります。
- 止水板の設置場所と設置方法
- 避難経路と避難場所
- 非常用電源の操作方法
- 緊急連絡網と連絡体制
- 高齢者や要支援者への対応
また大雨が予想される場合のタイムライン(時系列の行動計画)を事前に作成しておくことも有効です。
たとえば「大雨警報が発令されたら止水板を設置する」「避難指示が出たら避難場所へ移動する」といった形で、どの段階で何をすべきかを明確にしておくとよいでしょう。
なお管理組合の理事や防災委員は、数年で交代することが一般的です。
できれば災害関係の委員については任期を設けず、後任への引き継ぎをしっかり行うことでノウハウを継承していくことが望ましいといえます。
建物設備における浸水対策のポイント
マンションの浸水対策には、建物設備面での対策も欠かせません。
2019年の武蔵小杉タワーマンションの被害を受け、2020年6月には国土交通省と経済産業省から「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」が公表されました。
このガイドラインでは、以下の5つの重要なポイントが示されています。
- 浸水リスクの少ない場所への電気設備の設置
- 水防ラインの設定と建物内への浸水防止対策
- 排水設備からの逆流防止と貯留槽の溢水防止措置
- 洪水発生時のタイムラインと関係者の役割明確化
- 電気設備が浸水した場合の早期復旧対策
電気設備はできるだけ浸水リスクの少ない高い位置に設置することが、基本的な対策とされています。
低層階への設置が必要な場合は、水防ラインの設定など浸水対策を併せて講じる必要があります。
水防ラインとは建物を浸水から守るための防御線のことで、止水板や防水扉の設置、床面のかさ上げなどによって形成します。
出入口や開口部での対策を一体的に行い、建物内への浸水経路を遮断することが重要なのです。
既存のマンションでは電気設備を上層階へ移設することは、費用面から現実的ではないケースが多いでしょう。
そのような場合でも止水板の設置や排水設備の逆流防止措置など、可能な対策から取り組んでいくことが大切です。
以下は、ガイドラインで示されている浸水対策のポイントをまとめた表です。
| 対策のポイント | 具体的な内容 |
|---|---|
| 設備の高所設置 | 電気室、配電盤を浸水リスクの少ない場所に設置 |
| 水防ラインの設定 | 止水板、防水扉の設置、床面のかさ上げ |
| 逆流防止 | 下水道からの逆流を防ぐバルブの設置 |
| タイムライン策定 | 発災時の行動計画と役割分担の明確化 |
| 早期復旧対策 | 連絡体制図や設備図面の整備、復旧手順の明確化 |
水害に強いマンションの選び方

これからマンションの購入を検討している方にとって、水害リスクへの対応力は重要な選定基準のひとつです。
立地や設備、管理体制などを総合的に評価し、水害に強いマンションを選ぶことで、将来的なリスクを大幅に軽減することができます。
ここからは、マンション選びで確認すべきポイントについて解説していきます。
立地・階数の選定基準
マンション選びにおいて、まず確認すべきは立地と階数です。
災害リスクへの対策は場所選びから始まっているといっても過言ではありません。
ハザードマップで浸水想定区域に該当していないエリアを選ぶことが、最も基本的な対策になります。
ただし浸水想定区域内であっても、想定浸水深が浅いエリアやマンション自体に十分な対策が講じられていれば、リスクを許容できる場合もあります。
階数については2階以上の住戸を選ぶことをおすすめします。
1階住戸は庭があったり出入りが便利だったりと魅力的な面もありますが、浸水リスクの観点からは避けた方が無難です。
2階以上であれば万一マンションが浸水しても、自分の住戸への直接的な被害は最小限に抑えることができるからです。
立地と階数を選ぶ際のチェックポイントを以下にまとめます。
| チェック項目 | 確認方法 | 選定基準 |
|---|---|---|
| 浸水想定区域 | ハザードマップで確認 | 想定浸水深が浅いエリアを優先 |
| 河川との距離 | 地図で確認 | 河川から離れている方が安全 |
| 周辺の地形 | 現地確認、地図で確認 | 周囲より低い土地は避ける |
| 住戸の階数 | 物件情報で確認 | 2階以上を優先 |
| 1階床面の高さ | 現地確認、不動産会社に問い合わせ | 道路より高い方が安全 |
防災への取り組みが積極的なマンションの特徴

東日本大震災以降、防災への取り組みがマンションのアピールポイントのひとつとなっています。
当初は地震対策がメインでしたが、近年では水害対策を講じているマンションも増えてきました。
防災への取り組みが積極的なマンションには、以下のような特徴があります。
- 防災倉庫が設置されている
- 非常用電源(発電機)を備えている
- 止水板や土のうが常備されている
- 定期的な防災訓練が実施されている
- 防災マニュアルが整備されている
これらの取り組みは物件のパンフレットや重要事項説明書に記載されていることが多いため、購入前に確認してみましょう。
また管理組合の活動が活発かどうかも、重要な判断材料となります。
防災対策は継続的な取り組みが必要であり、管理組合が機能しているマンションでは将来的にも対策が維持・強化されていく可能性が高いでしょう。
購入を検討しているマンションがある場合は、不動産会社を通じて管理組合の活動状況や過去の防災訓練の実施状況などを確認することをおすすめします。
電気設備の浸水対策ガイドラインへの適合
新築マンションを検討している場合は、「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」への適合状況を確認することが重要です。
このガイドラインは2020年6月に国土交通省と経済産業省から公表されたもので、電気設備の浸水対策に関する設計・施工の指針が示されています。
ガイドラインに沿って設計されたマンションでは、以下のような対策が講じられていることが期待できます。
- 電気設備が浸水リスクの少ない場所に設置されている
- 水防ラインが設定され、止水板や防水扉が設置されている
- 下水道からの逆流防止措置が講じられている
- 災害時のタイムラインと役割分担が明確にされている
また自治体によっては、防災性能を有するマンションを認定する制度を設けている場合があります。
たとえば横浜市では2022年2月から「よこはま防災力向上マンション認定制度」を開始しています。
この制度では防災活動などのソフト対策を実施しているマンションを「ソフト認定」、建物全体の対策を実施しているマンションを「ハード認定」として認定しています。
ハード認定の基準には浸水ハザードマップの想定浸水深を踏まえた浸水対策が含まれており、ガイドラインに沿った設計が求められています。
こうした認定を受けているマンションは資産価値の面でも評価される傾向があり、購入の際の判断材料のひとつとなるでしょう。
以下は、ガイドライン適合確認のためのチェック項目です。
| 確認項目 | 確認方法 |
|---|---|
| 電気室の設置場所 | 設計図面で確認、不動産会社に問い合わせ |
| 止水板・防水扉の設置 | 現地確認、パンフレットで確認 |
| 逆流防止弁の設置 | 設計図面で確認、不動産会社に問い合わせ |
| 災害時タイムラインの策定 | 管理規約や防災マニュアルで確認 |
| 防災力向上認定の取得 | 自治体のホームページで確認 |
浸水発生時の初動対応と復旧

どれだけ入念に対策を講じていても、自然災害を完全に防ぐことはできません。
万一浸水被害が発生した場合に備えて、初動対応と復旧の流れを事前に把握しておくことも大切です。
適切な初動対応をとることで被害を最小限に抑えることができ、復旧に向けた手順や利用できる支援制度を知っておくことで被災後の生活再建をスムーズに進めることができるでしょう。
浸水時にとるべき行動
浸水被害が発生した際には、まず自分と家族の身の安全を最優先にしましょう。
浸水が始まってから避難しようとすると、道路が冠水して危険な状態になっている可能性があります。
そのため浸水が予想される場合は、避難指示が出る前でも早めに行動を開始することが重要です。
浸水時の行動指針を以下にまとめます。
- 気象情報と避難情報をこまめに確認する
- 避難指示が出たら速やかに避難場所へ移動する
- 避難が困難な場合は、建物内の上層階へ垂直避難する
- 浸水した場所には近づかない
- 電気設備や家電には触れない(感電の危険)
マンションの場合は建物自体が頑丈であるため、必ずしも避難所へ移動する必要はありません。
状況によっては自宅の上層階にとどまる「垂直避難」の方が安全な場合もあります。
ただし垂直避難を選択する場合は、停電や断水に備えて十分な備蓄があることを確認しておく必要があります。
また浸水した場所は水深がわかりにくく、マンホールのふたが外れていたり側溝に落ちたりする危険があります。
やむを得ず浸水した道路を歩く必要がある場合は、長い棒などで足元を確認しながら慎重に移動しましょう。
浸水時の危険と対処法を以下の表にまとめます。
| 危険な状況 | 対処法 |
|---|---|
| 道路の冠水 | 無理に歩かない、長い棒で足元を確認 |
| 感電 | 浸水した電気設備・家電には触れない |
| 下水の逆流 | トイレや排水口を水のうでふさぐ |
| 車両の水没 | 早めに安全な場所へ移動、無理に動かさない |
被災後の復旧手順と支援制度
浸水被害を受けた後は、復旧に向けた作業を段階的に進めていく必要があります。
復旧作業を始める前にまず大切なのは、被害状況を写真や動画で記録しておくことです。
この記録は保険金の請求や公的支援の申請の際に必要となるため、片付けを始める前に必ず撮影しておきましょう。
被災後の復旧手順は、おおむね以下のような流れになります。
- 被害状況の記録(写真・動画)
- 自治体への被害届の提出と罹災証明書の申請
- 保険会社への連絡と保険金請求の手続き
- 汚泥や浸水した物品の撤去・清掃
- 消毒作業
- 設備の点検・修理
- 生活再建に向けた各種手続き
罹災証明書は被災者支援の基礎となる重要な書類で、被害の程度(全壊、半壊、一部損壊など)を証明するものです。
各種支援制度を利用する際に必要となるため、早めに申請しておきましょう。
浸水被害を受けた場合に利用できる主な支援制度には、以下のようなものがあります。
| 支援制度 | 概要 | 申請先 |
|---|---|---|
| 被災者生活再建支援金 | 住宅が全壊等した世帯への支援金支給 | 市区町村 |
| 災害援護資金 | 被災者への低利または無利子貸付 | 市区町村 |
| 住宅応急修理制度 | 半壊以上の住宅の応急修理費用の支給 | 市区町村 |
| 税金・保険料の減免 | 所得税、住民税、国民健康保険料等の減免 | 税務署、市区町村 |
これらの支援制度は被害の程度や世帯の収入状況によって利用できるかどうかが異なります。
詳しくはお住まいの自治体の窓口に問い合わせるか、被災者支援に関する相談窓口を利用してください。
マンションの浸水対策には止水板「水用心」がおすすめ

マンションの浸水対策として、止水板の設置は非常に有効な手段です。
止水板とは建物の開口部からの水の侵入を防ぐために設置するパネルのことで、エントランスや駐車場入口などに設置することで建物内部への浸水を効果的に防ぐことができます。
止水板を選ぶ際には止水性能、設置のしやすさ、そしてコストパフォーマンスを総合的に検討することが重要ですが、これらすべてを高いレベルで満たしているのが止水板「水用心」です。
「水用心」は国内シェアNo.1のアルミニウム総合メーカーであるUACJグループが、自社工場で一貫生産している止水板です。
高い止水性能とコストパフォーマンスを両立しており、マンションの浸水対策に最適な製品といえます。
「水用心」の主な特徴を以下にまとめます。
| 特徴 | 詳細 |
|---|---|
| 止水性能 | JIS A 4716 Ws-3クラス相当(土のうの約100倍の止水性能) |
| 軽量設計 | 高さ450ミリメートル×幅1,000ミリメートルで約6キログラム |
| 設置の容易さ | 特別な工具不要、大人1人で約1分で設置可能 |
| 価格 | 50,600円(税込)から、他社比約20~90%のコストカット |
| カスタマイズ | 2段重ねで高さ1メートル以上、幅3メートル超にも対応可能 |
止水性能はJIS A 4716 Ws-3クラス相当で、一般的な土のうと比較して約100倍の止水性能を発揮します。
水圧を利用して密着させる機構により、シンプルな構造ながらも優れた止水性能を実現しているのです。
また中空のアルミニウム合金部材を使用しているため、軽くて丈夫で耐久性にも優れています。
設置は大人1人で約1分で完了し、特別な工具も必要ありません。
浸水が予想される際に素早く設置できることは、実際の災害対応において非常に重要なポイントです。
価格面でも自社工場での一貫生産により、他社製品と比較して大幅なコストカットを実現しています。
マンションのように複数箇所に止水板を設置する必要がある場合でも、予算内で対策を講じやすくなっているのです。
なお自治体によっては、止水板の設置に対して助成金制度を利用できる場合もあります。
マンションの浸水対策をお考えの管理組合や住民の方は、ぜひ「水用心」の導入をご検討ください。
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まとめ
本記事ではマンションにおける浸水リスクと対策について、幅広く解説してきました。
ここで記事の要点を振り返っておきましょう。
まず押さえておきたいのは、マンションは水害に対して必ずしも安全ではないという点です。
地下に設置された電気設備や機械式駐車場は浸水被害を受けやすく、建物全体の機能停止につながるリスクがあります。
2階以上の住戸であっても、停電や断水の影響からは逃れられません。
次に重要なのが、ハザードマップを活用したリスク確認です。
洪水ハザードマップと内水氾濫ハザードマップの両方を確認し、想定浸水深や浸水継続時間を把握しておくことで、必要な対策の方向性が見えてきます。
対策については個人レベルと管理組合レベルの両面から取り組むことが大切です。
個人では防災グッズの準備と定期点検、火災保険の水災補償の見直しから始め、管理組合では設備の浸水対策状況の確認や防災訓練の実施、止水板の導入検討などを進めていきましょう。
これからマンションを購入する方は、立地や階数に加えて防災への取り組み状況や電気設備の浸水対策ガイドラインへの適合なども確認することをおすすめします。
そして万一の被災に備えて、初動対応の行動指針と復旧の流れを事前に把握しておくことも忘れないでください。
気候変動の影響により、今後も大雨の頻度と強度は増加していくことが予想されます。
「うちは大丈夫だろう」と油断せず、今できる対策から始めていくことが大切です。
浸水被害を完全に防ぐことは難しくても、事前の備えによって被害を最小限に抑えることは十分に可能です。
本記事がマンションにお住まいの方々の防災意識向上と、具体的な対策の一助となれば幸いです。



