近年、集中豪雨や台風による浸水被害が全国各地で相次いでいます。 2023年には台風の影響で新宿駅の地下通路が冠水し、2,800棟以上の建物が被害を受けました。 こうした水害は、もはや特定の地域だけの問題ではありません。 都市部でも数時間で床上浸水に至るケースが増えており、住宅や店舗を守るための対策が急務となっています。
そこで注目を集めているのが、浸水を物理的にせき止める「止水板」です。 玄関や出入り口に設置するだけで、建物内への水の侵入を防げるため、手軽かつ効果的な水害対策として導入が進んでいます。 しかし、止水板にはさまざまな種類があり、性能や価格も製品によって大きく異なります。 「本当に効果があるのか」「どれを選べばよいのか」と迷っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、止水板の基本的な効果から、種類別の特徴、性能基準の見方、そして選び方のポイントまでを詳しく解説します。 浸水対策を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
止水板とは?浸水対策における役割と基本効果

止水板は、建物の開口部に設置して雨水の侵入を防ぐための板状の装置です。 玄関や通用口、地下への入り口など、水が入りやすい場所に取り付けることで、浸水被害を未然に防げます。 従来の土のうに代わる浸水対策として、一般住宅から商業施設、公共施設まで幅広く採用されるようになりました。
止水板が選ばれる理由は、その設置の手軽さと高い止水性能にあります。 土のうのように重い資材を運んだり、積み上げたりする必要がなく、短時間で設置できる製品が多く揃っています。 また、繰り返し使用できるため、長期的に見ると経済的なメリットも大きいです。
ここでは、止水板がどのような仕組みで水を防ぐのか、そして具体的にどのような効果が得られるのかを詳しく見ていきましょう。
止水板の仕組みと浸水を防ぐメカニズム

止水板は、建物の開口部を物理的にふさぐことで浸水を防ぎます。 基本的な構造は、アルミや樹脂などでできたパネルと、水の侵入を防ぐためのゴムパッキンで構成されています。 このパッキンが床面や壁面に密着することで、隙間からの水漏れを最小限に抑える仕組みです。
止水板の設置方法は、大きく分けて2つのタイプがあります。 1つ目は、あらかじめ取り付けたガイドレールにパネルを差し込む方式です。 レールが水平・垂直方向の位置を固定するため、誰でも正確に設置できます。 2つ目は、専用の固定金具で直接押さえつける方式で、レール工事が不要な簡易タイプに多く見られます。
水圧がかかると、止水板は床面や壁面にさらに強く押し付けられます。 この特性により、水位が上がるほど密着度が高まり、止水効果が増すという利点があります。 ただし、設置面に凹凸や段差があると隙間ができやすくなるため、事前の確認が欠かせません。
止水板の効果を最大限に発揮させるには、設置面との密着性がカギとなります。 製品を選ぶ際には、自宅や店舗の開口部の形状に合ったものを選ぶことが重要です。
土のうとの違いと止水板が選ばれる理由

浸水対策といえば、昔から土のうが広く使われてきました。 しかし近年では、土のうに代わって止水板を選ぶケースが増えています。 その理由を、両者の特徴を比較しながら見ていきましょう。
| 比較項目 | 土のう | 止水板 |
|---|---|---|
| 設置時間 | 30分〜1時間以上 | 数分〜10分程度 |
| 重量 | 1袋あたり20〜30kg | 1パネルあたり3〜10kg |
| 止水性能 | 隙間から漏水しやすい | 高い密着性で漏水を抑制 |
| 繰り返し使用 | 使い捨てが基本 | 何度でも使用可能 |
| 保管スペース | 大きなスペースが必要 | コンパクトに収納可能 |
| 設置できる人 | 体力のある人向け | 女性や高齢者でも対応可 |
土のうは、砂を詰めた袋を積み上げて水をせき止める方法です。 手軽に入手できる反面、1袋あたり20〜30kgと非常に重く、運搬や設置に体力を要します。 また、袋と袋の間に隙間ができやすいため、水が漏れ出すリスクも高くなります。
一方、止水板は軽量な素材で作られており、女性や高齢者でも設置しやすい設計です。 製品によっては1パネルあたり3kg程度のものもあり、1人で持ち運びができます。 さらに、ゴムパッキンによる密着構造により、土のうの約100倍の止水性能を持つ製品も存在します。
保管の面でも止水板は優れています。 土のうは使用後に廃棄するのが一般的ですが、止水板は繰り返し使えるため、長期的なコストを抑えられます。 また、コンパクトに収納できるため、物置やガレージの一角に保管しておくことも可能です。
こうした理由から、緊急時にすばやく対応でき、かつ高い止水効果を発揮する止水板が、現代の浸水対策として選ばれています。
止水板で得られる3つの効果
止水板を導入することで、浸水被害に対してさまざまな効果が期待できます。 ここでは、止水板がもたらす3つの主な効果について詳しく解説します。
建物内部の損害を最小限に抑える
止水板の最大の効果は、建物内部への浸水を防ぎ、財産の損害を最小限に抑えることです。 一度浸水してしまうと、床材や壁紙、家具、電化製品など、多くのものが損傷を受けます。 被害額は数十万円から、場合によっては数百万円に達することも珍しくありません。
特に深刻なのは、目に見えない部分への影響です。 床下に水が入り込むと、木材が腐食したりカビが発生したりして、建物自体の耐久性が低下します。 こうした被害は修復に時間と費用がかかり、生活再建の大きな妨げとなります。
止水板を設置しておけば、玄関や出入り口からの浸水を物理的にブロックできます。 完全に水を防げなくても、侵入する水量を大幅に減らせるため、被害を軽減する効果があります。 大切な家財や設備を守るために、止水板は非常に有効な手段といえるでしょう。
避難せず自宅で待機できる安心感
止水板を設置することで、浸水時でも自宅に留まれる可能性が高まります。 これは、特に家族のいる世帯や高齢者にとって大きなメリットです。
水害が発生すると、避難所への移動を余儀なくされることがあります。 しかし、豪雨の中を移動するのは危険をともない、体力的な負担も大きくなります。 小さな子どもや足腰の弱い高齢者がいる家庭では、避難そのものがリスクになりかねません。
止水板で玄関からの浸水を防げれば、水位が一定以下の場合は自宅待機という選択が可能になります。 もちろん、大規模な洪水や避難指示が出た場合は速やかに避難すべきです。 しかし、短時間の集中豪雨や内水氾濫であれば、止水板があることで自宅で安全に過ごせる安心感が得られます。
自宅避難ができれば、避難所での感染症リスクやプライバシーの問題も避けられます。 止水板は、命を守るだけでなく、生活の質を維持するためにも役立つ設備なのです。
設置・撤去が簡単で繰り返し使用可能
止水板の大きな特長として、設置と撤去のしやすさが挙げられます。 多くの製品は工具を使わずに取り付けられるため、緊急時でもすばやく対応できます。
例えば、脱着式の止水板はガイドレールにパネルを差し込むだけで設置が完了します。 所要時間は数分程度で、1人でも作業が可能です。 軽量設計の製品であれば、女性や高齢者でも無理なく扱えます。
撤去も同様に簡単で、パネルを外してレールを清掃するだけで済みます。 土のうのように使用後に廃棄する必要がなく、乾燥させて保管すれば何度でも使えます。 この繰り返し使用できる点は、長期的なコスト削減につながります。
止水板の耐用年数は製品によって異なりますが、適切に保管すれば10年以上使えるものも少なくありません。 初期費用はかかりますが、繰り返し使えることを考えれば、土のうよりも経済的といえるでしょう。
また、普段は収納しておけるため、景観を損なう心配もありません。 必要なときだけ取り出して使える手軽さが、止水板が選ばれる理由の1つです。
止水板の種類と特徴を比較

止水板にはさまざまな種類があり、それぞれに特徴や適した設置場所が異なります。 主な種類としては、脱着式、スライド式、起伏式、スイング式、シート式の5つが挙げられます。 建物の構造や使用目的に合わせて、最適なタイプを選ぶことが大切です。
ここでは、各タイプの仕組みと特徴、そして適した設置場所について詳しく解説します。
脱着式止水板の特徴と適した設置場所
脱着式止水板は、普段は取り外して保管し、必要なときに手動で設置するタイプです。 最も普及している形式で、一般住宅から商業施設まで幅広く採用されています。
脱着式の基本構造は、あらかじめ設置したガイドレールにパネルを差し込んで固定するというものです。 パネルはアルミ合金などの軽量素材で作られており、1枚あたり数kgと軽いため持ち運びが容易です。 床面との接触部にはゴムパッキンが取り付けられ、水の侵入を防ぎます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 設置方式 | ガイドレールにパネルを差し込み固定 |
| パネル重量 | 1mあたり約2.8〜10kg |
| 設置時間 | 数分〜10分程度 |
| 収納性 | コンパクトに保管可能 |
| 適した場所 | 住宅玄関、店舗入口、車庫、工場出入口 |
脱着式の最大のメリットは、汎用性の高さです。 設置場所を選ばず、さまざまな形状の開口部に対応できます。 また、使用しないときは収納できるため、景観を損なわない点も魅力です。
適した設置場所としては、住宅の玄関やマンションのエントランス、店舗のシャッター前などが挙げられます。 車庫や駐輪場の出入り口、工場の搬入口など、頻繁に人や車両が出入りする場所にも向いています。
スライド式止水板の特徴と適した設置場所
スライド式止水板は、レールやガイド溝に沿ってパネルを水平に移動させて展開するタイプです。 主に大型ビルや商業施設など、間口の広い開口部に採用されています。
スライド式の構造は、壁面や床面に設置したレールに沿ってパネルをスライドさせるというものです。 手動で操作するタイプと電動で動くタイプがあり、電動式はボタン1つで展開・収納ができます。 パネルと枠の接触面には専用のシール材が使われ、高い密閉性を確保しています。
スライド式の特長は、間口の広い場所でも対応できる点です。 複数のパネルを連結させることで、数十メートルの開口部もカバーできます。 また、収納時はコンパクトにまとまるため、通行の妨げになりません。
- 大型ビルのエントランス
- エレベーターホールの入り口
- 地下階段の入り口
- 広い間口を持つ商業施設
ただし、スライド式はレールの設置工事が必要となるため、初期費用が高くなる傾向があります。 また、レール部分の定期的な清掃やメンテナンスも欠かせません。 導入を検討する際は、設置環境と予算を十分に確認しましょう。
起伏式止水板の特徴と適した設置場所
起伏式止水板は、床に埋め込んだパネルを必要時に起こして使用するタイプです。 普段は床面にフラットに収納されているため、通行や車両の出入りを妨げません。
起伏式の仕組みは、床面に設置したレールやヒンジに沿ってパネルが上昇・降下するというものです。 手動で引き上げるタイプと、電動で自動的に動くタイプがあります。 電動式の場合、水位センサーと連動させることで、浸水を感知すると自動的にパネルが起き上がる設計も可能です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 設置方式 | 床に埋め込み、起き上がらせて使用 |
| 操作方法 | 手動または電動(自動展開可能) |
| 通常時の状態 | 床面とフラットで目立たない |
| 設置工事 | 大規模な埋め込み工事が必要 |
| 適した場所 | 地下駐車場、商業施設、工場の荷捌きスペース |
起伏式の最大のメリットは、景観を損なわないことです。 パネルが床に収納されているため、日常的には存在感がありません。 また、電動・自動タイプであれば、人が不在のときでも浸水を防げます。
適した設置場所としては、地下駐車場の出入り口や商業施設のアクセス通路などが挙げられます。 工場や倉庫の荷捌きスペースなど、フォークリフトが通行する場所にも最適です。
ただし、床への埋め込み工事が必要なため、設置費用は他のタイプより高額になります。 新築時や大規模改修時に導入を検討するのが現実的でしょう。
スイング式止水板の特徴と適した設置場所
スイング式止水板は、扉のようにパネルを回転させて止水位置に固定するタイプです。 片側のヒンジで壁面に取り付けられており、開閉がスムーズに行えます。
スイング式の構造は、ドアのようにパネルがスイング(回転)して開閉するというものです。 普段は開放状態にしておき、浸水の危険があるときにパネルを閉じて固定します。 ヒンジ部分には防水加工が施されており、閉じた状態で高い止水性能を発揮します。
スイング式の特長は、常設型でありながら緊急時にすぐ対応できる点です。 パネルを閉じるだけで止水が完了するため、設置に手間がかかりません。 また、開口部の片側にスペースがあれば設置できるため、狭い場所にも対応可能です。
- 住宅の玄関先やガレージ
- 商業施設のバックヤード
- 地下室の出入り口
- マンションのエントランス
スイング式は、頻繁に出入りがある場所よりも、緊急時のみ閉鎖する場所に向いています。 日常的にはパネルを開けておけるため、通行の妨げにならない点がメリットです。
シート式止水板の特徴と適した設置場所
シート式止水板は、柔軟性のある防水シートを展開して開口部をふさぐタイプです。 専用の収納ケースやレールに格納されており、必要時に引き出して使用します。
シート式の仕組みは、防水性能を持つシート自体が水をせき止めるというものです。 シートはロール状または折り畳み式で収納されており、手動で取り出して固定具にセットします。 シートの縁部にはガスケットやシール材が取り付けられ、隙間からの漏水を抑えます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 素材 | 防水性のある柔軟なシート |
| 収納方法 | ロール状または折り畳み式 |
| 設置方法 | 固定金具にセットして展開 |
| 高さ調整 | 可能(水位に応じて調整) |
| 適した場所 | 住宅のポーチ、商業施設の搬入口、倉庫 |
シート式の最大のメリットは、収納のコンパクトさと設置の手軽さです。 パネルタイプに比べて保管スペースが少なくて済み、持ち運びも容易です。 また、高さ調整が可能なため、さまざまな水位に対応できます。
適した設置場所としては、住宅のポーチや勝手口、商業施設の搬入口などが挙げられます。 倉庫や仮設施設の開口部など、一時的な止水対策が必要な場所にも向いています。
ただし、シート式はパネルタイプに比べると止水性能がやや劣る傾向があります。 高水位や長時間の浸水には対応しにくいため、使用環境を考慮して選ぶ必要があります。
止水板の効果を左右する性能基準と漏水量の見方

止水板を選ぶ際に重要なのが、止水性能を示す基準を理解することです。 同じ「止水板」でも、製品によって性能には大きな差があります。 この章では、JIS規格による等級や漏水量の見方について詳しく解説します。
JIS規格に基づく止水性能の等級とは
止水板の性能を比較する際に最も参考になるのが、JIS規格による等級です。 JIS A 4716規格では、漏水量に応じてWs-1からWs-6までの6段階で等級が定められています。
この規格は、1時間あたりに水圧面積1平方メートルあたりでどれだけの水が漏れるかを基準にしています。 数値が小さいほど止水性能が高く、Ws-6が最高等級となります。
| 等級 | 漏水量の基準 | 止水性能 |
|---|---|---|
| Ws-1 | 50ℓ超〜200ℓ以下/(h・㎡) | 低い |
| Ws-2 | 20ℓ超〜50ℓ以下/(h・㎡) | やや低い |
| Ws-3 | 5ℓ超〜20ℓ以下/(h・㎡) | 中程度 |
| Ws-4 | 1ℓ超〜5ℓ以下/(h・㎡) | 高い |
| Ws-5 | 0.1ℓ超〜1ℓ以下/(h・㎡) | 非常に高い |
| Ws-6 | 0.1ℓ以下/(h・㎡) | 最高 |
JIS規格には注意点があります。 この規格は「シャッター型」と「ドア型」のみを対象としているため、脱着式止水板は規格外となります。 そのため、脱着式製品では「Ws-〇相当」という表記が使われることが一般的です。
製品を選ぶ際は、メーカーが公表している漏水実験の結果を確認しましょう。 第三者機関による試験データがある製品は、信頼性が高いといえます。
漏水量の目安と許容範囲の考え方
漏水量とは、止水板から漏れ出す水の量を示す指標です。 単位は「ℓ/(h・㎡)」で表され、1時間あたり、水圧面積1平方メートルあたりの漏水量を意味します。
具体的な数値でイメージすると、Ws-2相当の製品で約33.6ℓ/(h・㎡)程度です。 これを水位50cm、幅2mの条件で換算すると、1分間あたりの漏水量は約0.56ℓとなります。 500mLのペットボトル1本程度と考えれば、実用上は問題ないレベルといえるでしょう。
一方、土のうと比較するとその差は歴然です。 同じ条件で土のうを使った場合、漏水量は止水板の約100倍にもなります。 つまり、1分間で500mLペットボトル100本分もの水が漏れ出す計算です。
- Ws-6相当:コップ1杯程度(0.4ℓ/㎡)で高性能
- Ws-4相当:ペットボトル1本程度(5ℓ/㎡)で実用的
- Ws-2相当:バケツ半分程度(33ℓ/㎡)でも土のうより優秀
- 土のう:大量の漏水が発生しやすい
完全に水を防ぐことは難しくても、漏水量を抑えられれば被害は大幅に軽減できます。 設置場所や想定される浸水リスクに応じて、必要な等級を選ぶことが大切です。
等級別に見る適切な使用場所
止水板の等級は、設置場所によって求められるレベルが異なります。 すべての場所に最高等級の製品が必要なわけではありません。 コストと性能のバランスを考えて、適切な等級を選びましょう。
| 等級 | 適した設置場所 | 特徴 |
|---|---|---|
| Ws-5〜6 | 電気室、ポンプ室、サーバールーム | 浸水すると復旧困難な重要設備 |
| Ws-4 | 地下施設、商業施設エントランス | 高い止水性能が求められる場所 |
| Ws-2〜3 | 一般住宅の玄関、店舗入口 | 実用的な性能とコストのバランス |
| Ws-1 | 一時的な簡易対策 | 低コストで導入可能 |
電気室やポンプ室など、浸水すると復旧に時間がかかる重要設備には、Ws-5以上の高性能製品が推奨されます。 こうした場所では、わずかな漏水でも大きな損害につながる可能性があるためです。
地下施設や商業施設のエントランスには、Ws-4相当の製品が適しています。 人の出入りが多い場所では、操作性と止水性能のバランスが重要です。
一般住宅の玄関や店舗の入口であれば、Ws-2〜3相当でも十分な効果が期待できます。 短時間の集中豪雨であれば、この等級でも浸水被害を大幅に軽減できるでしょう。
高性能の止水板は導入コストも高くなるため、費用対効果を考慮した選択が賢明です。 ハザードマップで地域の浸水リスクを確認し、必要十分な等級を選びましょう。
止水板の選び方と導入時のチェックポイント

止水板を導入する際には、いくつかの重要なチェックポイントがあります。 設置場所の条件や求める性能、予算などを総合的に判断して、最適な製品を選びましょう。 ここでは、選び方の具体的なポイントと導入までの流れを解説します。
設置場所の形状と密着性を確認する
止水板の効果は、設置面との密着性に大きく左右されます。 製品を選ぶ前に、まず設置予定場所の形状と状態を確認しましょう。
確認すべきポイントは以下のとおりです。
- 開口部の幅と高さ(正確な寸法を測定)
- 床面の材質(コンクリート、タイル、石材など)
- 床面の平坦さ(凹凸や段差の有無)
- 壁面や枠の状態(歪みやひび割れの有無)
- 既存の設備(段差、スロープ、排水溝など)
床面に凹凸や段差があると、止水板と床の間に隙間ができて水が漏れやすくなります。 古い建物では玄関枠が歪んでいることもあるため、事前にチェックが必要です。
止水板のパッキンは柔軟性があり、ある程度の凹凸には対応できます。 しかし、大きな段差や隙間がある場合は、別途シール材や調整パーツが必要になることもあります。 製品によって対応できる条件が異なるため、メーカーに相談することをおすすめします。
必要な防水性能と耐久性を見極める
止水板を選ぶ際は、JIS規格の等級を参考に、必要な防水性能を見極めましょう。 同時に、長期間使用できる耐久性も重要なチェックポイントです。
防水性能を確認するためには、以下の情報をチェックします。
| 確認項目 | チェックポイント |
|---|---|
| JIS等級または相当表記 | Ws-1〜6のどの等級に該当するか |
| 漏水量の実測値 | メーカーが公表する試験結果 |
| 第三者試験の有無 | 建材試験センターなどの認証 |
| 想定水位 | 対応できる最大水位 |
| 耐荷重 | 水圧に耐えられる強度 |
等級表記がない製品や、性能データを公開していないメーカーの製品には注意が必要です。 実際の止水性能が期待を下回る可能性があります。
耐久性については、素材の品質と保証内容を確認しましょう。 アルミ合金やステンレスなど、錆びにくい素材を使った製品は長持ちします。 ゴムパッキンは経年劣化するため、交換パーツが入手できるかどうかも重要です。
操作性・収納性・デザインを考慮する
止水板は緊急時に使用するため、操作のしやすさは非常に重要です。 また、普段は収納しておくため、保管スペースやデザインも選定のポイントになります。
操作性については、以下の点を確認しましょう。
- 1人で設置できるか(重量、サイズ)
- 工具なしで設置できるか
- 設置にかかる時間
- 女性や高齢者でも扱えるか
軽量設計の製品であれば、パネル1枚あたり3kg程度のものもあります。 こうした製品なら、1人でも短時間で設置が可能です。
収納性については、保管スペースを事前に確保しておく必要があります。 脱着式のパネルは立てかけて保管できるタイプが多く、物置やガレージに収まります。 収納袋やケースが付属している製品もあり、整理しやすさも選ぶポイントです。
デザイン面では、設置時の見た目を気にする方もいるでしょう。 最近ではスタイリッシュなデザインの製品も増えており、住宅や店舗の外観に合わせて選べます。
費用相場と導入までの流れ
止水板の費用は、製品のタイプや性能によって大きく異なります。 導入を検討する際は、予算に応じて選択肢を絞りましょう。
| タイプ | 費用の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| DIY用簡易止水板 | 1万〜10万円 | 自分で設置可能、簡易対策向け |
| 専門業者設置タイプ | 10万〜30万円 | 高性能、工事費込み |
| 大型・高性能タイプ | 30万〜100万円以上 | 施設向け、最高等級対応 |
一般住宅の玄関であれば、DIY用の簡易止水板で対応できるケースが多いです。 10万円以下で導入でき、工事も不要なため手軽に始められます。
より高い止水性能を求める場合は、専門業者に依頼する設置タイプがおすすめです。 現場調査から設置工事、アフターサポートまで一貫して対応してもらえます。
導入までの一般的な流れは以下のとおりです。
- 設置場所の確認と採寸
- 製品の選定と見積もり依頼
- 現場調査(業者設置の場合)
- 契約と発注
- 設置工事またはDIY設置
- 動作確認と使用方法の説明
設置範囲が広くなるほど複数のパネルが必要になり、費用も高くなります。 まずは見積もりを取り、予算内で最適な製品を選びましょう。
止水板の効果を最大化するための準備

止水板を導入しても、適切な準備ができていなければ効果を発揮できません。 事前の情報収集と日頃の点検が、いざというときの被害軽減につながります。 ここでは、止水板の効果を最大化するための準備について解説します。
ハザードマップで浸水リスクを把握する
止水板を導入する前に、まず自分の住んでいる地域の浸水リスクを把握しましょう。 そのために活用したいのが、自治体が公開しているハザードマップです。
ハザードマップには、過去の災害データや降雨シミュレーションに基づいて、以下の情報が記載されています。
- 河川氾濫による浸水予想区域
- 内水氾濫(下水道の処理能力超過)による浸水予想区域
- 想定される浸水の深さ
- 避難所の場所
- 避難経路
ハザードマップは各自治体のウェブサイトで閲覧できるほか、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」でも確認できます。 定期的に更新されるため、最新の情報を確認しておくことが大切です。
自宅が浸水想定区域内にある場合は、想定される水深に対応できる止水板を選ぶ必要があります。 例えば、50cmの浸水が想定される地域であれば、60cm以上の高さがある止水板を選びましょう。
建物の浸水経路を特定する
ハザードマップで地域のリスクを確認したら、次に自分の建物の浸水経路を特定します。 水がどこから入ってくるかを把握することで、効果的な対策が取れます。
一般的な住宅で浸水経路になりやすい場所は以下のとおりです。
| 場所 | リスクの理由 |
|---|---|
| 玄関 | 最も低い位置にあることが多く、水が集まりやすい |
| 勝手口 | 見落としがちだが、玄関同様に浸水リスクが高い |
| 掃き出し窓 | 床面との段差が小さい場合は浸水しやすい |
| 駐車場 | スロープがある場合、水が流れ込みやすい |
| 換気口・通気口 | 低い位置にあると水が入り込む |
| 地下室の入口 | 最も浸水リスクが高い場所の1つ |
浸水経路を特定したら、それぞれの場所に適した止水対策を検討します。 玄関や出入り口には止水板、換気口には防水ガラリなど、場所に応じた製品を選びましょう。
すべての経路に完璧な対策を取るのは難しい場合もあります。 その場合は、被害が大きくなりやすい場所から優先的に対策を進めましょう。
定期的な点検と保管方法
止水板は普段使わないため、いざというときに正常に機能するか不安になる方もいるでしょう。 定期的な点検と適切な保管が、止水板の効果を維持するカギです。
点検時にチェックすべきポイントは以下のとおりです。
- ゴムパッキンの状態(硬化、ひび割れ、劣化の有無)
- パネル本体の状態(傷、歪み、変形の有無)
- 固定金具やレールの状態(錆び、破損の有無)
- 設置時のゆるみがないか
ゴムパッキンは経年劣化しやすい部品です。 硬化してひび割れていると密着性が低下し、止水効果が落ちてしまいます。 劣化が見られる場合は、早めに交換パーツを入手しましょう。
保管場所としては、直射日光が当たらず、湿気の少ない場所が理想です。 物置やガレージの中に立てかけて保管するのが一般的です。 収納前には汚れを落とし、しっかり乾燥させてからしまいましょう。
年に1回程度は実際に設置する練習をしておくと、緊急時にスムーズに対応できます。 家族全員が設置方法を理解しておくことも大切です。
まとめ

この記事では、止水板の効果や種類、性能基準、選び方について詳しく解説しました。
止水板は、建物の開口部を物理的にふさぐことで浸水被害を防ぐ、効果的な水害対策です。 土のうと比べて止水性能が高く、設置や撤去も簡単で、繰り返し使用できる点が大きなメリットです。
種類としては、脱着式、スライド式、起伏式、スイング式、シート式の5タイプがあり、設置場所や用途に応じて選べます。 性能を比較する際はJIS規格の等級や漏水量を参考にし、必要な止水性能を備えた製品を選びましょう。
止水板の効果を最大化するためには、ハザードマップで浸水リスクを把握し、建物の浸水経路を特定しておくことが重要です。 また、定期的な点検と適切な保管を心がけ、いつでも使える状態を維持しましょう。
水害は、いつどこで発生するか分かりません。 「備えあれば憂いなし」という言葉のとおり、事前の対策が被害を大きく左右します。 この記事を参考に、ご自宅や店舗に合った止水板の導入を検討してみてください。



