止水板のデメリット7選|メリットと対策も徹底解説

近年はゲリラ豪雨や線状降水帯による被害が各地であいつぎ、これまで水とは無縁だった地域でも浸水のリスクが高まっています。その対策として注目されているのが止水板ですが、いざ検討をはじめると「思ったより高い」「うちの建物に付けられるのだろうか」といった不安が出てくるものです。

止水板は土のうにくらべて設置が早く、止水性能も高い一方で、費用や保管、設置条件といった弱点もかかえています。ここを知らないまま導入してしまうと、いざ水が来たときに効果を発揮できず、費用だけがむだになる、、、という結果になりかねません。

この記事では、止水板のデメリットを7つに整理したうえで、メリットや種類ごとの違い、そしてデメリットを解消するための具体的な対策までをまとめて解説します。読み終えたときには、自分の建物に止水板が向いているかどうかを自分で判断できる状態になっているはずです。導入して後悔しないために、まずは弱点から確認していきましょう。

目次 閉じる

止水板のデメリット・メリット早見表

はじめに、止水板のデメリットとメリットを対にして一覧にまとめます。細かい説明を読む前に全体像をつかんでおくと、あとの内容がずっと理解しやすくなります。

比較する視点デメリットメリット
費用土のうや簡易タイプにくらべて初期費用が高いくり返し使えるため長期では割安になりやすい
調達予算化と発注に手間がかかり、納期も必要一度そろえれば、次の出水期からすぐ使える
保管屋内の保管場所と保管ルールが必要土のうのようにカビや劣化で毎年つくり直す手間がない
運搬・設置間口が広い、段数が多いと持ち運びの負担が増える大人1人でも運べる軽さで、短時間の設置ができる
建物の条件建物の構造しだいでは効果を発揮できない床のかさ上げ工事をせずに既存の建物へ導入できる
設置面床の状態によっては下地工事が必要になる適切な下地であれば高い止水性能を安定して保てる
運用だれでも組み立てられるよう訓練がいる特別な工具がいらず、覚えれば女性1人でも設置できる

こうして並べてみると、止水板のデメリットの多くは「導入するまでの手間」に集中していることがわかります。裏を返せば、準備さえきちんと済ませておけば、あとは長く安定して使える対策だといえます。

とくに押さえておきたい点を、次の3つに絞って整理しました。

  • 費用の高さは「初期費用」の話であり、土のうの処分費まで含めた総額で見ると評価が変わる
  • 効果を左右するのは製品の性能よりも、建物の構造と設置面が条件を満たしているかどうか
  • 買っただけでは意味がなく、いざというときに組み立てられる体制づくりまでがセットになる

ここから先は、7つのデメリットをひとつずつ掘り下げていきます。それぞれの項目には解消のための手立ても用意されていますので、読み進めながら自分の現場に当てはめて考えてみてください。

止水板の7つのデメリット

止水板のデメリットは、大きく分けると「お金の問題」「置き場所と運用の問題」「建物側の条件の問題」の3つに分類できます。どれも導入前に確認しておけば手を打てるものばかりですが、見落としたまま発注してしまうと、あとから追加の費用や工事が発生するため注意が必要です。

まずは全体をひととおり見ておきましょう。

番号デメリット主な分類事前に確認したいこと
1土のうや簡易タイプにくらべて費用が高いお金予算の上限と、守るべき資産の金額
2予算化・調達に手間と時間がかかるお金社内の決裁フローと出水期までの残り日数
3保管スペースと保管方法に条件がある置き場所屋内に確保できるスペースの有無
4間口が広い、段数が多いと運搬と設置の負担が増える運用間口の幅と、設置を担当する人数
5建物の構造によっては止水効果が発揮されない建物外壁の構造と、玄関以外の浸水経路
6設置面の状態によっては下地工事が必要になる建物床がコンクリートか、アスファルトか
7緊急時に備えた設置訓練が欠かせない運用設置の担当者と、訓練の実施体制

以下では、この7項目をそれぞれくわしく見ていきます。

土のうや簡易タイプにくらべて費用が高い

止水板をためらう理由として、もっとも多くあげられるのが費用の高さです。土のうであれば1袋あたり数百円で用意でき、自治体によっては無料で配布されることもあります。これにくらべると、止水板は数万円から数十万円という単位の投資になり、心理的なハードルが一気に上がります。

実際の価格を、脱着式アルミ止水板「水用心」を例に見てみましょう。サイズによって金額は大きく変わります。

サイズ(高さmm×幅mm)参考価格(税込)重量
350×1,00050,600円より約4kg
450×1,00063,800円より約6kg
550×1,00077,000円より約7kg
350×2,00096,800円より約9kg
450×2,000119,900円より約11kg
550×2,000141,900円より約14kg

※送料および設置工事の費用は含まれていません。

法人の現場になると金額はさらに上がります。シャッター前へ設置した事例では、支柱をふくめた製品費用が313,000円(税抜、送料・工事費別)となりました。間口が広い現場ほど、支柱や連結の部材が増えて総額がふくらむという構造は理解しておきたいところです。

一方で、費用を初期投資の金額だけで判断すると、実態を見誤ることがあります。土のうには次のような見えにくいコストがあるためです。

  • 使用後の土のうは水と汚泥を吸って重くなり、細菌や悪臭の原因となるため放置できない
  • 多くの自治体では土や砂を一般ごみとして回収しておらず、事業所から出た汚れた土のうは産業廃棄物として処理費用がかかる場合がある
  • 台風が来るたびに袋と砂を買い足す必要があり、支出が毎年くり返される
  • 保管中に紫外線で袋が劣化し、持ち上げた瞬間に破れて中身が散らばることもある

止水板は使用後に水道水で洗い流して乾かせば、くり返し使えます。数年から十数年という単位で見れば、毎回の購入と廃棄がなくなる分だけ総額が逆転する可能性は十分にあります。守りたい設備や在庫の金額と照らし合わせて、投資として見合うかどうかを判断してみてください。

予算化・調達に手間と時間がかかる

金額そのものよりも、意外と障害になりやすいのが「買うまでの手間」です。数十万円規模の支出となれば、法人であれば稟議や予算計上が必要になりますし、個人宅でも家族の合意が要ります。思い立ってすぐ買えるものではないという点が、土のうとの大きな違いです。

さらに見落とされがちなのが納期です。止水板は間口の寸法に合わせてつくる製品が中心のため、既製品を棚から出すようには手に入りません。参考として、問い合わせから引き渡しまでの標準的な流れを示します。

工程目安の期間内容
問い合わせ・ヒアリング即日〜数日間口の幅や止めたい高さ、写真の共有
現地調査3日〜14日程度取付位置、壁の構造、床の状態の確認
提案・見積もり3日〜1週間程度部材構成の検討と見積書の提出
製作約2か月受注後の製作。時期によって変動する
施工・引き渡し半日〜数日施工後に取付方法の説明を実施

つまり、相談から実際に使える状態になるまで、およそ3か月前後を見込んでおく必要があるわけです。台風が近づいてから動きだしたのでは、その年の出水期にはまず間に合いません。

調達をスムーズに進めるために、次の点を早めに整理しておくと安心です。

  • 社内の決裁に何日かかるかを逆算し、出水期の3〜4か月前には見積もりを取る
  • 補助金を使う場合は、申請から交付決定までの期間も工程に組みこむ
  • 複数の間口を守るなら、優先順位をつけて段階的に導入する計画を立てる
  • 概算だけでも早く知りたいときは、間口の写真と寸法を送るだけで見積もりを受けられる方法を使う

「時間がかかる」というデメリットは、裏返せば早く動いた人だけが確実に間に合うということでもあります。検討段階であっても、まずは概算を把握しておくことをおすすめします。

保管スペースと保管方法に条件がある

止水板は使わないときには外しておく製品ですから、当然しまっておく場所が必要になります。土のうのように山積みにする必要はなく、重ねたり立てかけたりしてコンパクトに収められますが、どこにでも置いていいわけではないという点に注意が必要です。

とくに気をつけたいのが、止水性能を支えているゴム部分の扱いです。適切に保管しないと、いざ設置したときに水が漏れてしまう恐れがあります。

保管のポイント理由
直射日光と雨を避け、屋内に保管する紫外線や雨で止水ゴムの劣化が早まるため
壁のフックに掛けるか、立てかけて置くゴムが圧縮されて変形すると、止水性能が下がるため
使用後は水道水で洗い、中空部分も流して乾燥させる泥や砂が残るとゴムの密着をさまたげるため
年に1度以上は点検し、劣化があればゴムを交換する止水ゴムの耐久性はおよそ10〜15年が目安のため

保管場所を考えるうえでは、次のような視点も役に立ちます。

  • 設置する間口からできるだけ近い場所に置き、運び出す距離を短くする
  • 台車や棚を使う場合は、通路の幅と扉の開口を事前に確認しておく
  • 屋外の物置しか空いていないときは、日光と雨が当たらない位置かどうかを見きわめる
  • 複数の間口ぶんを保管するなら、どの板がどの間口用かを板ごとに表示しておく

保管に条件があるのは事実ですが、ゴムを圧縮せず屋内に置くという2点さえ守れば管理はむずかしくありません。土のうのようにカビや劣化で毎年つくり直す手間を考えれば、負担はむしろ軽いといえるでしょう。

間口が広い・段数が多いと運搬と設置の負担が増える

止水板は1枚あたりでは軽い製品です。高さ350mm×幅1,000mmであれば約4kg、もっとも大きい高さ550mm×幅2,000mmでも約14kgですから、土のう1袋の20〜25kgとくらべればかなり扱いやすい重さです。

ただし、間口が広くなるほど必要な枚数が増え、合計の作業量はふくらんでいきます。ここが見落とされやすい点です。

現場の条件想定される負担
玄関など間口1m前後1枚で足りることが多く、1人で数分の作業
ガレージなど間口3m前後中間支柱の設置がくわわり、2人での作業が安心
シャッターや搬入口など間口6m以上板の枚数と支柱が増え、複数人での段取りが必要
浸水深1m前後に備えて2段積みする場合上段を持ち上げる動作がくわわり、高さの負担が増す

とはいえ、土のうを何十個も積み上げる作業とくらべれば、負担は比較にならないほど小さくなります。積み上げに数十分から数時間かかる土のうに対し、止水板であれば数分から10分程度で設置が完了するという差は、水が迫っている状況では決定的です。

運搬と設置の負担を減らすためには、次のような工夫が有効です。

  • 1枚あたりの幅を欲張らず、持ち運びやすいサイズに分割して発注する
  • 保管場所から間口までの動線に段差や障害物がないかを確認しておく
  • 中間支柱を使い、通行が必要な部分だけをあとから閉じられるようにする
  • 設置する順番を決めて、板に番号を書いておく

建物の構造によっては止水効果が発揮されない

これは費用よりも深刻な、もっとも注意すべきデメリットです。止水板は開口部から入ってくる水を止める製品であり、建物そのものを防水する製品ではありません。したがって、壁や床に水を通す部分が残っていれば、玄関を完全に塞いでも室内は濡れてしまいます。

典型的な例が木造住宅です。外壁の構造に止水性がない建物では、玄関に止水板を取り付けても壁のすき間から水が入りこみ、期待した効果が得られません。

止水板以外の浸水経路として、次のような箇所が挙げられます。

  • 外壁の通気口や換気口
  • 給排水管やガス管が壁を貫通している部分
  • シャッターの下端やレールのすき間
  • 排水口や便器からの逆流(内水氾濫のときに起こりやすい)
  • 基礎の打ち継ぎ部やクラック
建物の種類止水板の効きやすさ補足
鉄筋コンクリート造高い壁面の止水性が高く、開口部を守る効果が出やすい
鉄骨造(外壁の仕様による)中程度貫通部やシャッターまわりの処理が要点になる
木造条件による外壁の止水性が低いと、開口部だけでは防ぎきれない

だからこそ、製品を選ぶ前に建物の水の経路を調べることが欠かせません。専門の施工店であれば、止水板が必要な箇所と、逆止弁や排水ポンプなど別の手段で塞ぐべき箇所を切り分けて提案してくれます。「止水板を付ければ安心」と考えず、建物全体で対策を組み立てる姿勢が、結果としてむだな出費を防ぎます。

設置面の状態によっては下地工事が必要になる

止水板は、板と床、板と柱をゴムで密着させることによって水を止めています。したがって、接する面が平らで、かつ十分な強度をもっていることが性能を発揮する前提になります。ここが崩れると、どれほど高性能な製品でも水は入ってきます。

とくに問題になりやすいのが、次のような設置面です。

  • アスファルト舗装の床。強度が足りず、コンクリート基礎への打ち換えが必要になる場合がある
  • 砂利敷きや土間。ゴムが密着せず、すき間から漏水しやすい
  • 表面に凹凸やひび割れがある土間コンクリート
  • 排水勾配がきつく、床面が水平でない場所
  • 柱や壁の下地が弱く、支柱を固定する金物を留められない場所
設置面の状態想定される対応追加費用の目安感
平滑なコンクリート土間そのまま設置できることが多い追加なし
軽微な凹凸・ひび割れ部分的な補修や不陸調整小規模
アスファルト舗装コンクリート基礎への打ち換え中〜大規模
砂利・土の地面基礎の新設が必要大規模
壁の下地が不十分補強金物の設置や下地の補修現場により変動

見積もりの段階でこうした条件が判明すると、当初の想定より総額が上がることになります。しかし、ここを省いて設置しても水は止まりません。むしろ「対策したつもり」で被害を受けるほうが損失は大きくなります。

なお、柱や壁面、床面の状況によっては、そもそも設置ができない場合もあります。写真を送るだけで設置の可否と概算の見積もりを確認できる仕組みもありますので、迷ったら発注前の段階で相談しておくと確実です。

緊急時に備えた設置訓練が欠かせない

最後のデメリットは、製品そのものではなく運用にかかわるものです。止水板は買った時点で完成ではなく、いざというときにその場にいる人が組み立てられて、はじめて意味をもちます

大雨の警報が出るのは、夜間や休日であることも少なくありません。担当者が不在のときに、居合わせた人が設置できなければ、せっかくの投資は生きないままになります。特別な工具を必要とせず、大人1人でおよそ1分で取り付けられる製品であっても、手順を知らない人には同じことです。

体制づくりのために、次の項目を整えておきましょう。

  • 引き渡し時の取付説明会には、できるだけ多くの関係者に参加してもらう
  • 設置の手順を写真つきの手順書にまとめ、保管場所の見える位置に貼る
  • 年に1〜2回は実際に組み立てる訓練を行い、同時に点検も済ませる
  • 担当者が異動や退職をしたときに、引き継ぎが行われる仕組みにしておく
  • 設置を判断する基準(どの気象情報が出たら設置するか)をあらかじめ決めておく
実施する内容頻度の目安確認するポイント
設置訓練年1〜2回手順書どおりに組み立てられるか、所要時間
製品の点検年1回以上止水ゴムの劣化、金物のゆるみ、変形の有無
手順書の見直し担当者の交代時記載内容と実際の手順にずれがないか
保管状態の確認訓練とあわせてゴムが圧縮されていないか、乾燥しているか

訓練が必要という点を負担に感じるかもしれませんが、1回あたり10分程度の作業を年に数回確認するだけです。消火器の点検や避難訓練と同じように、防災の習慣のひとつとして組みこんでしまえば、無理なく続けられます。

止水板の7つのメリット

前の章で挙げた弱点は、いずれも導入前の準備でおおむね解消できるものでした。では、その手間をかけてまで止水板が選ばれるのはなぜでしょうか。理由は単純で、水が迫っている場面で本当に頼りになる手段が、ほかにあまり存在しないからです。

土のうは安価ですが、必要な高さまで積むには相当な人手と時間がかかります。シート式や簡易タイプは手軽な反面、水圧の高い場面では十分に持ちこたえられないこともあります。短時間で設置でき、なおかつ確かな止水性能をもつという2つの条件を同時に満たせるのが、脱着式の止水板の立ち位置です。

ここでは代表的なメリットを7つに整理しました。

番号メリット効いてくる場面
1土のうより短時間・少人数で設置できる警報が出てから水が来るまでの数十分
2土のうの約100倍の止水性能をもつ長時間の降雨や、水位が上がりきった局面
32段重ねと連結で高さ・幅に対応できる浸水深1m前後、シャッターなどの広い間口
4普段は人も車も通行できる平常時の出入りや、日々の景観
5床のかさ上げ工事なしで導入できる既存の建物に後から対策を追加するとき
6錆に強く、洗えばくり返し使える導入から10年、20年という長い運用期間
7自治体によっては補助金の対象になる初期費用を抑えたい検討段階

それぞれをくわしく見ていきましょう。

土のうより短時間・少人数で設置できる

浸水対策でもっとも重要な要素は、じつのところ性能ではなく速さです。ゲリラ豪雨では、警報が出てから水が敷地に達するまでの時間がごく短く、数十分のうちに準備を終えられるかどうかが被害の分かれ目になります。

土のうの場合、1袋あたりの重さは約20〜25kgあります。間口を塞ぐには何十個も運んで積み上げねばならず、作業には数十分から数時間を要します。高齢の方や女性だけの現場では、必要な高さまで届く前に力尽きてしまうことも珍しくありません。

一方の止水板は、1枚あたりの重さが軽く設計されています。脱着式アルミ止水板「水用心」を例にとると、次のとおりです。

サイズ(高さmm×幅mm)重量想定される作業人数
350×1,000約4kg1人
450×1,000約6kg1人
550×1,000約7kg1人
350×2,000約9kg1人
450×2,000約11kg1〜2人
550×2,000約14kg1〜2人

しかも設置に特別な工具はいりません。ダブルクリップで留める、ノブボルトを締める、マグネットで固定するといった動作だけで完了し、大人1人でおよそ1分という速さで取り付けられます。

この差が実際の現場でどう効くのかを整理すると、次のようになります。

  • 台風が接近した夜間でも、その場にいる人だけで対策を完了できる
  • 複数の間口をかかえる工場や倉庫でも、順番に回って短時間で塞げる
  • 力仕事にならないため、担当者を選ばずに任せられる
  • 水が引いた後の撤去も、取り付けと同じ手順を逆にたどるだけで済む

「重い袋を積む」という発想から離れられる点こそ、止水板の最大の価値だといえます。

土のうの約100倍の止水性能で浸水を大幅に抑えられる

速さと並んで重要なのが、どれだけ水を止められるかという性能です。ここには日本産業規格による客観的な基準が存在し、JIS A 4716では漏水量に応じてWs-1からWs-6までの等級が定められています。

等級漏水量 ℓ/(h・㎡)
Ws-150ℓ超〜200ℓ以下
Ws-220ℓ超〜50ℓ以下
Ws-310ℓ超〜20ℓ以下
Ws-44ℓ超〜10ℓ以下
Ws-51ℓ超〜4ℓ以下
Ws-61ℓ以下

※止水板の面積1㎡あたり、1時間の漏水量を示します。

「水用心」はこのうちWs-4クラス相当、すなわち漏水量10ℓ/(h・㎡)以下の性能をもちます(水深500mm、止水板幅2,000mmにおける社内実験値)。これは土のうと比較しておよそ100倍の止水性能にあたります。

性能を支えているのは、水圧そのものを利用する機構です。浸水すると板の中空部分に水が入り、重さが増して浮力を打ち消しながら床面へ密着します。水位が上がるほどしっかり止まるという設計思想は、積み上げた重さだけで耐える土のうとは根本的に異なります。

性能面での裏づけとして、次のような検証も行われています。

  • 京都大学の実験設備を借りた共同実験を実施
  • 社内の実験槽では試せなかった浸水深さ2mでの強度テストを実施
  • 水が流れる状態を再現した動水実験を実施
  • 止水板を越えて水があふれる状況を想定した越水実験を実施

なお、止水板は水を1滴も通さない製品ではありません。等級が示すとおり、あくまで漏水量を一定以下に抑えるものです。完全な防水ではなく「被害を最小限にとどめる装置」と理解しておくほうが、導入後の期待とのずれが生じません。

2段重ね・連結で高さ1m超・間口3m超にも対応できる

止水板を検討する方からよく寄せられるのが、「うちの間口は広すぎて無理ではないか」「想定される浸水深が高いから足りないのでは」という声です。実際には、板を積み重ねる、支柱でつなぐという2つの方法によって、かなり幅広い現場に対応できます。

まず高さについてです。パネル1枚の高さは150〜550mmの範囲で、100mm刻みに調整できます。これを2段に積み重ねることで、浸水深さ1.1mまで対応が可能になります。膝上どころか腰の高さまで想定した対策が組めるということです。

次に幅です。パネルの幅は500〜3,000mmの範囲で、1mm刻みという細かさで製作できます。さらに脱着式の中間支柱を使って連結すれば、3mを超える開口部も塞げます。

項目対応できる範囲
止水できる高さ0.15m〜1.1m
止水できる間口0.5m〜15m程度
パネル1枚の高さ150〜550mm(100mm刻み)
パネル1枚の幅500〜3,000mm(1mm刻み)
板の厚さ33mm

設計から製造まで一貫して対応できる体制があるため、現場に合わせたカスタマイズも柔軟に行えます。実際の設置事例を見ると、対応の幅がよくわかります。

  • 個人宅のガレージ(三重県四日市市)
  • 公共施設の間口3.8m(東京都江戸川区)
  • 倉庫のエレベーター前、間口6.5m
  • 会社玄関の自動ドアまわり

既製品では収まらない間口や段差があっても、あきらめる必要はありません。まずは寸法を伝えて、対応できるかどうかを確認してみてください。

普段は人も車も通行できる(脱着式)

浸水対策で悩ましいのは、水が来るのは年に数回、あるいは数年に一度という点です。残りの364日をどう過ごせるかも、対策を選ぶうえで欠かせない視点になります。

床をかさ上げしたり、常設の壁を立てたりすれば水は防げますが、日常の通行に支障が出ます。台車が通れない、車が乗り越えられない、来客がつまずくといった不都合が毎日続くわけです。

脱着式の止水板であれば、この問題は起こりません。使わないときは外して保管しておくため、平常時の見た目と動線をそのまま保てます。エントランスに土のうが積まれている状態とくらべれば、店舗や事務所での印象の差は歴然です。

さらに、設置方法にはいくつかの選択肢が用意されています。

仕様特徴
ダブルクリップ仕様市販のクリップで留めるだけ。もっとも安価に取り付けられる
落とし込み(ノブボルト)仕様採用実績がもっとも多い。屋外側・屋内側のどちらにも設置できる
落とし込み(ハンドル)仕様固定方法をハンドルに変更し、さらに素早く設置できる
マグネット仕様磁性板を取り付けるだけで、業者による工事が不要。個人でも取り付けられる

注目したいのは、屋内側にも設置できるという点です。外開きの扉であっても、止水板を設置したまま扉の開閉と通行ができます。マグネット仕様であれば建物側に薄い磁性板を付けるだけですから、平常時の外観にほとんど影響を与えません。

  • 台車や車両の出入りが多い倉庫でも、日常業務を妨げない
  • 店舗の景観を損なわず、営業中でも違和感がない
  • 通行が必要な部分だけを開けておき、必要になってから閉じる運用もできる

床のかさ上げ工事なしで既存建物に導入できる

浸水対策の王道は、建物そのものを高くすることです。しかし、すでに建っている建物で床の地盤をかさ上げするとなれば、工期も費用も桁が変わり、営業や稼働を長期間止めなければなりません。現実的な選択肢とはいえないケースがほとんどでしょう。

止水板はこの点で優れています。開口部の両サイドに支柱を取り付ける程度の工事で済むため、既存の建物を使いながら浸水対策を完了できます。

対策の方法工期の目安業務への影響建物への影響
床地盤のかさ上げ数週間〜数か月長期の休業が必要大規模な改修
建物の移転・建て替え数か月〜全面的に停止根本からの造り直し
止水板の設置半日〜数日ほぼ影響なし支柱の取り付けのみ

工場や店舗では、工事のたびに業務を止めるわけにはいきません。専門の職人が施工する体制であれば工程の調整が細かく利き、稼働への影響を抑えた段取りで進められます。

導入時に確認しておきたい点も挙げておきます。

  • 柱や壁の下地に支柱を固定できるか(現地調査で確認)
  • 床面が支柱の固定に耐える強度をもっているか
  • 建物の防水状態に問題がないか
  • 玄関以外の浸水経路に別の対策が必要か

一級建築施工管理技士のような有資格者が現地を見たうえで判断してくれる施工店であれば、躯体と防水の状態をふまえた最適な設置方法を提案してもらえます。既存の建物だからと導入をあきらめる前に、一度相談する価値は十分にあります。

アルミ製で錆に強く繰り返し使える

浸水対策の資材は、水にさらされることが前提です。したがって、濡れた後にどうなるかが製品の寿命を大きく左右します。

止水板の主要部材にはアルミニウム合金が使われており、錆に強い性質をもちます。しかも「水用心」に採用されているのは、トラックの荷台に使われているものと同じ中空のアルミニウム合金部材です。軽さと丈夫さを両立させた素材が、そのまま止水板に転用されているわけです。

止水ゴムにはEPDMゴム発泡体が使われ、耐久性の目安はおよそ10〜15年とされています。日光や雨が当たらない場所に保管すれば、劣化を抑えてさらに長く使えます。

部位材質耐久性の目安
止水板・端部支柱・中間支柱アルミニウム合金錆に強く長期使用が可能
止水ゴムEPDMゴム発泡体(幅30mm、厚さ10mm)10〜15年が目安、劣化時は交換

土のうと比較すると、運用の負担の差がはっきりします。土のうは水を吸って汚泥を含むと再利用がむずかしく、袋も紫外線で劣化していきます。対して止水板は、使用後に水道水で洗い流し、乾かして保管するだけです。

長く安心して使うために、次のような体制も整えられています。

  • メーカー保証は1年間で、期間内の不具合は無償で修理・交換
  • 保証期間の経過後も、有償で修理・交換に対応
  • 年に1〜2回の点検を実施し、ゴムの劣化を確認
  • 10年を目安に、著しい劣化があれば止水ゴムを交換

アルミはリサイクルに適した素材でもあり、脱プラスチックの観点から評価する企業も増えています。BCP対策の一環として導入した事例では、この点を利点に挙げる声も聞かれます。

自治体によっては補助金の対象になる

最後に、費用というデメリットを直接やわらげてくれるメリットを紹介します。止水板の設置費用に対して、補助金や助成金を交付している自治体があるという事実です。

浸水被害を減らすことは、住民や事業者だけでなく行政にとっても利益になります。そのため、防水板や止水板の設置費用の一部を補助する制度を設けている市区町村が各地に存在します。

確認したい項目見るべきポイント
制度の有無市区町村の防災・下水道部門のページを確認する
対象となる建物住宅のみか、店舗や事業所も含まれるか
補助の割合と上限額費用の何割か、上限はいくらか
対象となる工事製品費のみか、設置工事費も含まれるか
申請の時期着工前の申請が必要か、年度ごとの予算枠があるか

制度を活用するうえで、とくに気をつけたい点があります。

  • 多くの制度では着工前の申請が条件となっており、設置してからでは受けられない
  • 年度の予算枠に達すると受付が終了する場合がある
  • 交付決定までに時間がかかるため、製作の納期とあわせて工程を組む必要がある
  • 見積書や図面など、申請に必要な書類を施工店に用意してもらう

補助金の有無や条件は地域によって異なるため、自分で調べる前に施工店へ聞いてしまうのが早道です。地域ごとの制度に詳しい施工店であれば、申請に必要な書類の準備まで含めて相談に乗ってくれます。費用の高さで導入をためらっている方は、この制度を確認してから判断しても遅くはありません。

種類別に見るデメリットとメリットの違い

ここまで止水板の弱点と長所を見てきましたが、じつは「止水板」とひとくくりにされる製品のなかには、まったく性格の異なるタイプがいくつも含まれています。同じ浸水対策の道具でありながら、価格は数百円から数百万円まで開きがあり、止められる水の深さも、必要な工事の規模もばらばらです。

つまり、ここまで挙げてきたデメリットのいくつかは、種類を変えれば消えるものでもあります。費用が気になるなら安いタイプがありますし、工事をしたくないなら置くだけの製品もあります。ただし何かを取れば何かを失うのが常で、安さを選べば止水性能が落ち、手軽さを選べば対応できる水深が下がります。

この章では代表的な4つのタイプについて、それぞれの弱みと強みを整理します。全体像を先に示しておきましょう。

タイプ費用の目安止水性能設置の手間工事の要否
脱着式(アルミパネル式)数十万円〜高い数分程度支柱の取り付け工事が必要(一部不要)
シート式数千円〜数万円中程度数分〜十数分不要なものが多い
土のう・簡易式1袋数百円〜低い〜中程度数十分〜数時間不要
自動起立式・電動式数十万円〜数百万円高いほぼ不要(自動)大がかりな工事が必要

自分の現場がどの条件に当てはまるかを考えながら、読み進めてみてください。

脱着式(アルミパネル式)

現在もっとも広く使われているのが、この脱着式です。開口部の両サイドに支柱を設けておき、水が来そうなときにアルミのパネルを差し込んで固定する仕組みになっています。三恵工業が採用している「水用心」もこのタイプにあたります。

デメリットとしては、まず費用の高さが挙げられます。サイズにもよりますが、パネル1枚で5万円台からという水準で、間口が広ければ中間支柱の費用も加わります。加えて、支柱を壁や床に固定するための工事が必要となるため、発注から使えるようになるまでに数か月を見込む必要があります。

一方で、性能面での安心感はほかのタイプを大きく上回ります。JIS A 4716のWs-4クラス相当という水準は、土のうのおよそ100倍にあたる止水性能です。パネルを2段に重ねれば浸水深1.1mまで、中間支柱で連結すれば間口15m程度まで対応できるため、住宅からシャッター付きの倉庫まで幅広く使えます。

評価する軸内容
弱み初期費用が高い、支柱の取り付け工事と納期が必要、屋内での保管場所がいる
強み止水性能が高い、高さと幅の対応範囲が広い、くり返し使える、平常時は撤去できる
向いている場所工場、倉庫、店舗、マンション共用部、地下駐車場、戸建ての玄関やガレージ

このタイプを選ぶときに確認しておきたい点をまとめます。

  • 支柱を固定する壁や床に、十分な強度と下地があるか
  • 保管する場所を屋内に確保できるか
  • 出水期までに製作と施工の期間を確保できるか
  • 屋外側と屋内側のどちらに設置するか(外開き扉なら屋内側という選択もある)

なお、脱着式のなかにはマグネットで固定する仕様もあり、この場合は建物側に磁性板を取り付けるだけで済みます。工事のハードルを下げたい方は、こうした選択肢もあわせて検討してみてください。

シート式

シート式は、防水性のある布やシートを開口部に張って水を止めるタイプです。近年は塩化ビニル製の柔らかい素材を使い、地面に置くだけで設置できる製品も増えています。アルミパネルにくらべて軽く、価格も手ごろな点が支持されています。

デメリットは、止水できる高さと耐久性の面にあります。素材が柔らかいぶん、水深が深くなるほど形が変わりやすく、強い水圧や漂流物の衝突には弱い傾向があります。また、シートそのものが破れたり、経年で防水層が劣化したりするため、アルミ製にくらべると交換の周期は短くなりがちです。

反面、地面の状態を選ばない点は大きな強みです。金属製やパネル式の止水板は地面とゴムを密着させて水を止めるため、砂利道や凹凸のある地面ではすき間ができてしまいます。柔軟な素材のシート式であれば、多少のでこぼこにも素材が馴染んで設置できます。

評価する軸内容
弱み対応できる水深が浅い、鋭利なものに弱い、経年劣化で交換が必要
強み価格が手ごろ、軽くて扱いやすい、地面の凹凸に馴染む、工事不要のものが多い
向いている場所一般住宅の玄関、小規模店舗、砂利敷きの駐車場、応急的な対策

導入を検討する際は、次の点を確認しておくと失敗が減ります。

  • 想定される浸水深に対して、製品の対応高さが足りているか
  • 水圧で動かないよう、重りやアンカーが必要かどうか
  • シートを固定する部分が、建物側に用意できるか
  • 使用後に洗って乾かせる保管場所があるか

「まずは軽く備えておきたい」という段階であれば、有力な選択肢になります。ただし、守りたい資産の金額が大きい現場では、シート式だけで完結させず、脱着式との併用も視野に入れておくほうが安心です。

土のう・簡易式

もっとも古くから使われてきた方法が土のうです。袋に土や砂を詰めて積み上げるだけという単純さゆえ、いまでも多くの現場で使われています。近年は水を入れて膨らませる水嚢や、ホームセンターで買える簡易的な止水材も同じ枠に含まれます。

最大の強みは、なんといっても価格の安さと入手のしやすさです。土のう袋は1袋数百円で手に入り、自治体によっては無料で配布されることもあります。急な出水にも、その場にある材料で対応できる点は捨てがたい利点です。

しかし、運用の負担は決して軽くありません。土を詰めた土のうは1袋あたり約20〜25kgにもなり、間口を塞ぐには何十個も運ばねばなりません。積み方にもコツが必要で、袋の口を水が来る側と逆に向ける、上下の段を互い違いに積むといった手順を守らないと、すき間から水が入ってしまいます。

さらに見落とされやすいのが処分の問題です。一度水を吸って汚泥を含んだ土のうは、細菌や悪臭の原因となるため放置できません。多くの自治体では土や砂を一般ごみとして回収しておらず、事業所から出た汚れた土のうは産業廃棄物として扱われ、高額な処分費用がかかる場合もあります。

項目土のう水嚢(水のう)
中身土・砂
準備土の確保と詰め作業が必要ごみ袋と水だけですぐ作れる
安定性重く安定している軽く浮きやすく、2〜3段積みが必要
向く場面本格的な浸水、くり返しの備え台風接近前、初期の浅い浸水
片付け使い捨てが基本水を流すだけで軽い

土のうを使う場合に押さえておきたいポイントを挙げます。

  • 袋に詰める土は6〜8割までにとどめる(詰めすぎると硬くなりすき間ができる)
  • 縛り口は水が来る側と逆に向け、上流から下流へ順に並べる
  • 上下の段はレンガのように継ぎ目をずらして積む
  • 軽度の浸水は1段、しっかり防ぎたいときは2段を目安にする
  • 使用済みの袋は天日で乾かしてから、自治体のルールに従って処分する

なお、土のうと止水板は対立するものではありません。止水板で正面を守り、側面や勾配のある部分を土のうで補うといった併用は、実際の現場でよく採られる方法です。

自動起立式・電動式

浸水を検知すると自動で板が立ち上がる、あるいはスイッチひとつで昇降する製品も存在します。地下駐車場の入口や、大規模施設のスロープなど、人が駆けつけられない場所を守るために採用されるタイプです。

強みは、人の手を必要としない点に尽きます。夜間や休日、担当者が不在の時間帯に水が来ても確実に作動しますし、間口が非常に広い場所でも設置の労力が発生しません。水の浮力を利用して起き上がる方式であれば、停電時にも機能します。

その代わり、費用と工事の規模はほかのタイプとは桁が異なります。地中に格納する構造となるため、床を掘削して基礎をつくる大がかりな工事が必要です。加えて、可動部と駆動装置をもつぶん、定期的な点検と保守が欠かせません。動かなくなれば意味を失う設備ですから、維持管理を続ける体制が前提になります。

評価する軸内容
弱み費用が高額、掘削をともなう大規模工事が必要、定期点検と保守が必須
強み人手が不要、夜間や無人時でも作動、広い間口に対応、日常の通行を妨げない
向いている場所地下駐車場の入口、地下鉄や地下街の出入口、大規模施設のスロープ

検討する際は、次の点を整理しておきましょう。

  • 新築や大規模改修のタイミングに合わせられるか(後付けは負担が大きい)
  • 保守点検の費用を、毎年の予算に組みこめるか
  • 停電時にも作動する方式かどうか
  • 人が駆けつけられる場所であれば、脱着式で足りないか

「人がいない場所を守る」という条件に当てはまるなら有力ですが、そうでなければ脱着式のほうが費用対効果は高くなります。

費用・止水性能・設置の手間で選ぶ判断基準

4つのタイプを見比べてきましたが、では自分の現場にはどれが合うのでしょうか。判断の軸は、費用、止水性能、設置の手間という3つに集約できます。ここに「守りたい資産の金額」を掛け合わせると、答えは自然と絞られていきます。

考え方の順序を示します。まず守りたいものの価値を見積もり、次に想定される浸水深を確認し、最後に人手と予算の条件を当てはめるという流れです。

現場の条件おすすめのタイプ理由
戸建ての玄関、浸水深30cm程度シート式または脱着式予算と対応高さのバランスが取りやすい
店舗や事務所、在庫や設備を守りたい脱着式止水性能と景観の両立ができる
工場・倉庫、間口が広い脱着式(中間支柱で連結)幅の制約が少なく、稼働を止めずに導入できる
地下駐車場の入口、無人になる時間がある自動起立式・電動式人が駆けつけられなくても作動する
応急的にすぐ備えたい土のう・水嚢費用をかけずその日のうちに用意できる
砂利敷きや凹凸のある地面シート式地面に馴染んで密着しやすい

判断に迷ったときの目安を、いくつか挙げておきます。

  • 守りたい資産が数百万円を超えるなら、初期費用よりも止水性能を優先する
  • ハザードマップの想定浸水深が50cmを超えるなら、土のう単独では現実的でない
  • 設置できる人が1人しかいないなら、軽量で工具不要のタイプに絞る
  • 夜間や休日に無人になる建物では、自動化を検討する価値がある
  • 予算が足りない場合は、すべての間口を一度に守ろうとせず、被害が大きい箇所から段階的に導入する

火災保険との関係も判断材料になります。契約内容によっては、床上45cm以上の浸水でなければ補償されないケースがあるため、この高さを一つの基準として対策の水準を決める考え方も有効です。

そして何より大切なのは、製品を選ぶ前に自分の建物の条件を正しく把握することです。壁の構造、床面の状態、玄関以外の浸水経路といった要素を確認しないまま製品だけを選んでも、期待した効果は得られません。写真と間口の寸法を送るだけで設置の可否と概算の見積もりを確認できる施工店もありますので、比較検討の入口として活用してみてください。

止水板のデメリットを解消する5つの対策

ここまで読んで、「デメリットは分かったけれど、結局どうすればいいのか」と感じている方も多いはずです。ご安心ください。前半で挙げた7つの弱点は、そのほとんどが導入前の工夫で小さくできます。

大切なのは、製品を選ぶ前に段取りを整えることです。費用は制度を使って抑えられますし、運搬の負担は仕様の決め方で変わります。組み立てられる人がいないという問題も、訓練を仕組みにしてしまえば解決します。

この章では、実際の現場でよく採られている5つの対策を紹介します。まずは全体像を確認しましょう。

対策解消できるデメリット着手するタイミング
補助金・助成金の活用費用が高い、予算化が難しい見積もりを取る前
中間支柱やサイズ調整運搬の負担、費用のふくらみ仕様を決める段階
設置訓練とマニュアル整備緊急時に組み立てられない引き渡しの直後から
保管場所と動線の設計保管条件、運び出しの手間発注する前
事前の現地調査効果が出ない、下地工事の追加検討のいちばん最初

順番に見ていきます。

補助金・助成金を活用して初期費用を抑える

止水板の導入をためらう理由として最も多いのが費用です。ところが、この負担を公的な制度で軽くできる可能性があることは、意外と知られていません。浸水被害を減らすことは行政にとっても利益になるため、設置費用の一部を補助する制度を設けている市区町村が各地に存在します。

補助の内容は自治体によって差があり、費用の2分の1を上限いくらまで、といった形が一般的です。対象を住宅に限る制度もあれば、店舗や事業所まで含める制度もあります。まずは自分の地域に制度があるかどうかを確かめるところから始めましょう。

確認する項目見るべき内容
制度の名称「防水板設置助成」「浸水対策工事補助」など呼び方はさまざま
対象となる建物住宅のみか、店舗・事業所も対象か
補助の割合費用の何分の1か
上限額1件あたりの上限、間口ごとの上限
対象となる費用製品費のみか、設置工事費や現地調査費も含むか
対象となる区域浸水想定区域内に限定されているか

制度を使ううえで、次の点はとくに注意が必要です。

  • 多くの制度は着工前の申請を条件としており、設置してからでは受けられない
  • 年度ごとの予算枠があり、上限に達した時点で受付が終わる場合がある
  • 交付決定まで数週間かかることもあり、製作の納期とあわせた工程管理がいる
  • 申請には見積書、図面、現況写真といった書類が必要になる
  • 過去に同じ制度を利用していると、再度の申請ができないこともある

制度を使えば、実質的な負担が半分近くまで下がるケースもあります。費用の高さを理由に検討を止めてしまう前に、まずは制度の有無を調べてみてください。

自治体の補助金制度の調べ方と申請の流れ

では、具体的にどう調べればよいのでしょうか。手順は難しくありません。次の順に確認していけば、おおむね30分ほどで結論が出ます。

まず、お住まいの市区町村の公式サイトで「止水板 補助」「防水板 助成」といった言葉を検索します。担当している部署は、防災担当課や下水道課、都市整備課などが多い傾向です。サイト内で見つからない場合は、代表番号に電話して「浸水対策の設備に補助制度があるか」と尋ねるのが確実です。

制度が見つかったら、次は申請の流れを把握します。一般的な進み方は以下のとおりです。

手順内容期間の目安
1. 事前相談担当課に建物の条件を伝え、対象になるか確認数日
2. 見積もり取得施工店に現地を見てもらい、見積書と図面を用意1〜3週間
3. 交付申請申請書に見積書、現況写真、図面を添えて提出数日
4. 交付決定自治体の審査を経て、決定通知を受け取る2週間〜1か月
5. 契約・発注決定後に正式契約。ここで初めて発注する数日
6. 製作・施工製品の製作と取り付け工事約2か月
7. 実績報告完了写真、領収書などを添えて報告施工後すみやかに
8. 補助金の受領額の確定を経て振り込み1〜2か月

この表を見ると、相談から入金までに半年近くかかることが分かります。出水期に間に合わせたいなら、逆算して冬から春のうちに動き出すのが理想です。

申請をスムーズに進めるためのコツも挙げておきます。

  • 見積書は補助制度の様式に合わせた内訳で作ってもらう
  • 設置前の写真は、間口の全体が写るように複数枚撮っておく
  • 制度に詳しい施工店であれば、書類の準備まで手伝ってもらえる
  • 併用できる制度がないか、都道府県の窓口にも確認する

自分で調べるより、地域の制度を扱い慣れた施工店に聞いてしまうほうが早いのも事実です。見積もりを依頼する際に、あわせて相談してみてください。

中間支柱やサイズ調整で必要な範囲だけ設置する

「全部の間口を守ろうとしたら、とんでもない金額になった」という声はよく聞かれます。しかし、浸水の入口となる開口部の重要度は同じではありません。優先度をつけ、必要な範囲に絞って設計すれば、費用も運搬の負担も大きく下げられます。

ここで役に立つのが、部材の柔軟さです。パネルの高さは150〜550mmの範囲を100mm刻みで、幅は500〜3,000mmの範囲を1mm刻みで指定できます。想定される浸水深に対して過剰な高さを選ばなければ、その分だけ費用は下がります。

もう一つの鍵が、脱着式の中間支柱です。広い間口でも支柱で区切ってパネルを連結できるため、1枚あたりのサイズを抑えられます。

設計の工夫得られる効果
想定浸水深に合わせて高さを決める過剰な仕様を避け、費用を抑えられる
中間支柱でパネルを分割する1枚が軽くなり、運搬と設置が楽になる
通行が必要な部分を後から閉じる構成にする平常時の動線を保ったまま対策できる
優先度の高い間口から段階的に導入する一度の支出を分散できる
屋内側への設置を選ぶ外開き扉でも通行を妨げない

実際の現場では、こうした調整が効果を発揮しています。三重県のお客様からは、対象となる間口が数十か所もあり全てを対策すると高額になるため断念していたが、予算の範囲内で全ての間口に一度で設置できたという声が寄せられています。

設計を詰める際には、次の観点で優先順位をつけると整理しやすくなります。

  • 浸水したときに被害が最も大きい部屋につながる開口部はどこか
  • 水が流れ込む方向から見て、最初に到達する間口はどこか
  • 電気設備やサーバー、在庫を置いている場所に近い開口部はどこか
  • 人手が限られる時間帯でも、確実に設置できる箇所はどこか

すべてを一度に完璧にする必要はありません。守るべき順序を決めて、段階的に固めていく進め方も十分に現実的です。

設置訓練とマニュアル整備で誰でも組み立てられる体制にする

止水板は、買った時点では効果を発揮しません。水が迫ったその瞬間に、その場にいる人が組み立てられて初めて意味をもちます。大雨の警報が出るのは夜間や休日であることも多く、担当者が不在のまま被害を受けた例は珍しくありません。

「大人1人で1分」という手軽さがあっても、手順を知らない人には同じことです。だからこそ、覚えている人を増やす仕組みが欠かせません。

引き渡しの際には取付設置の説明会が行われますので、ここにできるだけ多くの関係者が参加することが第一歩になります。そのうえで、次のような体制を整えていきましょう。

取り組み頻度の目安内容
設置訓練年1〜2回実際に組み立て、所要時間を計測する
製品の点検年1回以上止水ゴムの劣化、金物のゆるみを確認
手順書の見直し担当者の交代時記載と実際の手順にずれがないか確認
設置判断基準の共有年1回どの気象情報が出たら設置するかを再確認

マニュアルを作るときのポイントも押さえておきましょう。

  • 文字だけでなく、工程ごとの写真を入れる
  • 保管場所の見える位置に貼り、探さなくても目に入るようにする
  • パネルに番号を書き、設置する順番を対応させる
  • 設置を判断する基準を数値で決める(大雨警報の発表時、河川の水位が一定に達した時など)
  • 連絡網に「誰が設置を指示するか」まで書きこむ

点検と訓練を同じ日にまとめてしまうと、負担は大幅に減ります。1回あたりの作業は10分程度ですから、消火器の点検や避難訓練と並べて年間の防災行事に組みこんでしまうのが現実的です。

備えを持っていることと、備えを使えることは別物です。この差を埋める作業こそ、投資を無駄にしない最後の一手になります。

保管場所と搬出動線をあらかじめ設計する

保管に条件がある点は、止水板のデメリットとして挙げた項目の一つでした。ところが、これは発注前に置き場所を決めておくだけで、ほとんど問題にならなくなります。逆に、届いてから場所を探し始めると、屋外の物置に押しこむような事態を招きかねません。

まず押さえておきたいのが、保管のルールです。止水性能を支えているゴムを守ることが目的になります。

ルール理由
直射日光と雨が当たらない屋内に置く紫外線や雨でゴムの劣化が早まるため
壁のフックに掛けるか、立てかけて保管するゴムが圧縮されて変形すると止水性能が落ちるため
使用後は水道水で洗い、中空部分も流して乾燥させる泥や砂が残ると密着をさまたげるため
年に1度以上は点検し、劣化があれば交換する止水ゴムの耐久性は10〜15年が目安のため

次に考えるのが、動線です。水が迫っている状況では、探す時間も運ぶ時間も惜しくなります。設置する間口からできるだけ近い場所に置くのが原則です。

  • 保管場所から間口までの距離を、できれば20m以内に収める
  • 通路の幅と扉の開口を測り、パネルが通るかを確認する
  • 段差や階段がある動線は避ける(台車が使えなくなるため)
  • 複数の間口ぶんを保管する場合は、どの板がどこ用かを板ごとに表示する
  • 夜間でも取り出せるよう、照明と鍵の管理を決めておく

保管場所の候補としては、倉庫の壁面、機械室の空きスペース、駐車場に面した収納などが挙がります。壁に掛ける形であれば床面積をほとんど取らないため、思っているより設置しやすいはずです。

置き場所と動線を先に決めておけば、保管の手間は土のうより確実に軽くなります。毎年つくり直す必要も、処分に費用がかかることもありません。

事前の現地調査で設置可否と止水効果を確認してから発注する

最後に紹介する対策が、じつは最も重要です。ここまで挙げてきたデメリットのうち、建物の構造で効果が出ない、設置面の下地工事が必要になるという2つは、事前の調査でしか防げません。製品を選ぶ前に現場を見ることが、失敗を避ける唯一の方法です。

浸水対策の工事は、ただ製品を取り付ければよいものではありません。建物の立地や構造、水の流れ込む経路、想定される浸水の高さは現場ごとに異なり、この把握を怠れば十分な効果を発揮できません。玄関に止水板を付けたのに、通気口や配管の貫通部から水が入ってきたという話は、実際に起きていることです。

調査で確認される項目を整理します。

確認項目見るポイント
間口の寸法幅、止めたい高さ、開口部の形状
壁の構造支柱を固定できる下地があるか、躯体の状態
床面の状態コンクリートかアスファルトか、平滑さ、勾配
建物の防水性外壁に水を通す部分がないか
浸水経路通気口、配管貫通部、シャッター下端、排水の逆流
周辺の地形水がどちら側から流れ込むか

調査を経て初めて、止水板が必要な箇所とそれ以外の手段で塞ぐべき箇所を切り分けられます。排水ポンプや逆流防止弁が必要な現場もありますし、外壁の防水塗装で対応すべき部分が見つかることもあります。

依頼するときの進め方も知っておくと安心です。

  • まずは開口部の写真と間口のサイズを送り、設置可否と概算見積もりを確認する
  • 写真での判断が難しい場合は、現地調査を依頼する
  • 一級建築施工管理技士など、建物を判断できる有資格者が対応するかを確認する
  • 調査の費用がかかるかどうかを事前に聞いておく
  • 見積もりに下地工事の費用が含まれているかを確かめる

三恵工業では現地調査と相談を無料で承っており、東海3県を中心に全国へ対応しています。写真と寸法をお送りいただければ、即日から4日以内に見積もりをご案内できます。

「うちの建物に付けられるのだろうか」という不安は、専門家に見てもらえばその日のうちに解消できます。デメリットを心配して立ち止まるより、まず現状を確かめることから始めてみてください。

導入前に確認したいチェックリスト

ここまで読み進めてきた方は、止水板の弱点も強みも、そして対策の方向性もつかめているはずです。あとは自分の建物に当てはめて判断するだけになりました。

とはいえ、いざ検討を始めると「何から手をつければいいのか」で迷いがちです。そこでこの章では、業者へ相談する前に自分で確認できる4つの項目を、順を追って整理します。ここを押さえておくと、見積もりの精度が上がり、話も早く進みます。

確認する順番項目分かること
1ハザードマップの確認必要な止水の高さ、そもそも対策が要るか
2間口と建物の状態設置できるか、追加工事が要るか
3想定される被害額かけてよい予算の上限
4製品と施工店の実績どこに何を頼むか

紙に書き出しながら進めると、頭のなかが整理されます。それでは順番に見ていきましょう。

ハザードマップで浸水想定区域と想定浸水高を確認する

すべての出発点になるのが、自分の土地にどれくらいの水が来るのかという情報です。これが分からないまま製品を選ぶと、高さが足りずに水を越されるか、逆に必要以上の仕様に費用を払うことになります。

調べ方は簡単です。国土交通省が公開している「重ねるハザードマップ」に住所を入力するか、市区町村が配布しているハザードマップを開けば、洪水と内水氾濫の想定が色分けで示されています。自宅や事業所の位置に重なる色を見れば、想定される浸水の深さが分かります。

想定浸水深状況の目安必要な対策の水準
0.5m未満大人の膝下まで。床上浸水が始まる止水板1段で対応できる範囲
0.5〜1.0m大人の腰まで。1階の設備が水没する止水板2段、または高さのある仕様
1.0〜3.0m1階の天井付近まで。避難が最優先止水板では限界。垂直避難の計画が必要
3.0m以上2階まで水没する恐れ建物を離れる判断が前提

確認する際は、次の点もあわせて見ておいてください。

  • 洪水(河川の氾濫)だけでなく、内水氾濫の想定も別に用意されている場合がある
  • 川から離れた立地でも、下水の排水能力を超えれば市街地に水があふれる
  • 過去の浸水実績を公開している自治体もあり、より現実的な参考になる
  • 土地の勾配を見て、水がどちら側から流れ込むかを推測しておく
  • 敷地内でも場所によって高低差があり、低い開口部から水が入る

近年は1時間に50mm以上の短時間強雨が発生する回数が、以前のおよそ1.5倍に増えています。「これまで浸水したことがないから大丈夫」という経験則は、もはや通用しなくなりつつあります。まずは地図で事実を確かめるところから始めてください。

間口の幅・設置面の素材・壁の構造を確認する

想定される浸水の高さが分かったら、次は建物側の条件です。ここで確認する内容が、そのまま見積もりの前提になります。

まずは間口の幅を測りましょう。玄関、ガレージ、シャッター、勝手口と、水が入りうる開口部をすべて書き出して寸法を記録します。あわせて、止めたい高さも決めます。ハザードマップの想定浸水深を基準に、10cmほど余裕を見ておくと安心です。

次に足元を見ます。止水板は板と床をゴムで密着させて水を止めるため、設置面の状態が性能を左右します。

設置面の状態想定される対応
平滑なコンクリート土間そのまま設置できることが多い
軽微な凹凸やひび割れ部分的な補修や不陸の調整
アスファルト舗装強度不足のため、コンクリート基礎への打ち換えが必要な場合がある
砂利敷き・土の地面基礎の新設が必要
排水勾配がきつい床傾きに合わせた加工や、別の対策の検討

最後に壁です。支柱を固定するための下地があるか、そして外壁そのものに水を通す部分がないかを見ます。木造など外壁の止水性が低い建物では、玄関を塞いでも壁のすき間から水が入ってしまうため、開口部だけの対策では効果が出ません。

自分で確認するときのポイントを挙げます。

  • 間口の幅は、床面の実寸を測る(枠の内側と外側で数cm変わることがある)
  • 開口部の写真は、全体が入るように少し離れた位置から撮る
  • 床の材質が分かるよう、足元のアップも1枚撮っておく
  • 通気口や配管が壁を貫通している箇所を探し、位置を控える
  • シャッターの場合は、下端のすき間や左右のレール部分も見ておく

寸法と写真がそろっていれば、現地に来てもらう前でも概算の見積もりを受けられます。判断に迷う部分は無理に自己判断せず、そのまま伝えてしまうほうが確実です。

想定被害額から費用対効果を試算する

止水板の費用が高いか安いかは、単体では判断できません。守ろうとしているものの金額と並べて、はじめて意味をもちます。ここを飛ばしてしまうと、いつまでも「高いから」という理由で決断できません。

考え方はシンプルです。一度浸水したときに失うものを金額に置き換え、止水板の費用と比べます。被害は建物の修繕だけでは終わらない点に注意してください。

被害の種類内容の例
建物の修繕床材、内装、断熱材の張り替え、乾燥と消毒
設備の損傷機械、サーバー、電気設備、空調の交換
在庫・商品の廃棄水没した商品、原材料、書類
休業による損失復旧までの営業停止、稼働停止
人件費泥出し、清掃、片付けの労務
信用の低下納期の遅延、取引先への影響

事業所の場合、休業損失が最も大きくなることが少なくありません。1日あたりの売上に復旧までの日数を掛ければ、おおよその金額が見えてきます。

試算するときの手順を整理します。

  • 1階に置いている設備と在庫の金額を洗い出す
  • 復旧にかかる日数を見積もる(泥の除去と乾燥だけで1週間以上かかることもある)
  • 1日あたりの売上または稼働の価値を掛け合わせる
  • 火災保険の補償範囲を確認し、自己負担になる部分を把握する
  • 止水板の費用を、想定される耐用年数で割って年あたりの金額に直す

火災保険については、契約内容によって床上浸水45cm以上といった条件が設けられている場合があります。この基準を下回る浸水では補償されないこともあるため、証券を一度確認しておくことをおすすめします。

たとえば製品と工事で50万円かかったとしても、10年使うなら年間5万円です。一度の浸水で数百万円の損失が出る現場であれば、判断は自ずと決まってくるはずです。

メーカーの止水性能値と施工実績を確認する

最後の確認項目は、誰から何を買うかという点です。止水板は見た目が似ていても、止められる水の量には大きな差があります。カタログの言葉ではなく、数値と実績で見きわめましょう。

確認したいのは、製品の性能を示す客観的な数値と、その製品を扱う施工店の経験です。どちらか一方では不十分で、優れた製品も施工が甘ければ水を止められません。

確認する対象見るべき内容
止水性能JIS A 4716の等級、漏水量の実測値、試験の条件
対応範囲止水できる高さと間口、2段積みや連結の可否
材質と耐久性本体の材質、止水ゴムの種類と交換の目安
第三者による検証大学や公的機関との共同実験の有無
施工実績自分と似た用途や規模の事例があるか
保証と保守保証期間、点検の体制、部品交換への対応

施工店を選ぶ際のポイントも挙げておきます。

  • 建物を判断できる有資格者が現地調査を担当するか
  • 止水板以外の浸水対策(逆止弁、排水ポンプ、防水塗装)も提案できるか
  • 調査から施工まで自社で一貫して対応しているか
  • 戸建て、マンション、地下駐車場、工場など多様な現場の実績があるか
  • 引き渡し後の点検や部品交換に応じてもらえるか

三恵工業では、一級建築施工管理技士が現地調査から対応し、会社設立から40年以上にわたって蓄積した経験をもとに施工しています。個人宅のガレージから間口6.5mの倉庫まで、規模を問わず対応した事例があります。

JIS A 4716(Ws等級)で止水性能を客観的に見極める

止水性能を比べるうえで、最も頼りになる物差しが日本産業規格です。JIS A 4716では、止水板の漏水量に応じてWs-1からWs-6までの等級が定められています。数字が大きいほど漏れる水が少なく、性能が高いことを示します。

等級漏水量 ℓ/(h・㎡)性能の水準
Ws-150超〜200以下最も低い
Ws-220超〜50以下低い
Ws-310超〜20以下標準的
Ws-44超〜10以下高い
Ws-51超〜4以下かなり高い
Ws-61以下最も高い

※止水板の面積1㎡あたり、1時間の漏水量を示します。

数値の読み方に少し補足を加えます。Ws-4であれば、1㎡あたり1時間に漏れる水は10ℓ以下です。バケツ1杯にも満たない量が、間口1m四方あたりで1時間かけて入ってくる計算になります。これに対して土のうは、積み方によって差が大きく、すき間からの漏水を数値で保証することができません。

等級を確認するときの注意点も押さえておきましょう。

  • 等級だけでなく、試験の条件(水深、止水板の幅)まで確認する
  • 社内実験値か、第三者機関による試験値かを見る
  • 「相当」という表記がある場合、どの条件での相当なのかを尋ねる
  • 完全に水を止める製品は存在しないという前提で比較する
  • 実際の漏水量は、建物の構造や設置場所の状態によって変わる

参考までに、脱着式アルミ止水板「水用心」はWs-4クラス相当、すなわち漏水量10ℓ/(h・㎡)以下の性能をもちます(水深500mm、止水板幅2,000mmにおける社内実験値)。これは土のうと比較しておよそ100倍の止水性能にあたります。さらに京都大学の実験設備を借りた共同実験では、浸水深さ2mでの強度試験や、水が流れる状態を再現した動水試験、止水板を越えて水があふれる越水試験まで行い、性能を確かめています。

数値と検証の裏づけがある製品を選ぶことが、いざというときの結果を分けます。カタログを比べる際は、まずWs等級の欄を探してみてください。

止水板のデメリットに関するよくある質問

最後に、止水板の導入を検討している方から実際によく寄せられる質問をまとめました。どれもデメリットに関わる内容で、購入前に解消しておきたい疑問ばかりです。

質問結論
完全に浸水を防げるか完全ではないが、被害を大幅に抑えられる
耐用年数はどのくらいか本体は長期使用が可能、止水ゴムは10〜15年が目安
一人でも設置できるかサイズによるが、多くの場合は可能
マンションや地下駐車場に使えるか使える。実績も多い
メンテナンスは必要か年1〜2回の点検と、使用後の洗浄が必要

それぞれ詳しくお答えします。

止水板を設置すれば浸水を完全に防げますか?

正直にお答えすると、完全に防げるわけではありません。止水板は水を1滴も通さない製品ではなく、漏水量を一定以下に抑えることで被害を小さくする装置です。JIS A 4716の等級が漏水量で示されているのも、そもそも一定量の漏れが前提になっているためです。

理由は大きく2つあります。1つは、板と床、板と柱の接触部分にわずかなすき間が残ること。もう1つは、浸水の経路が開口部だけではないことです。

止水板でカバーできない浸水経路には、次のようなものがあります。

浸水経路有効な対策
外壁の通気口・換気口開口部の閉塞、防水カバーの設置
給排水管やガス管の貫通部隙間の充填、シーリングの補修
シャッターの下端やレール専用の止水部材、シートとの併用
排水口や便器からの逆流逆止弁の設置、水嚢による一時的な蓋
基礎の打ち継ぎ部やクラック防水塗装、補修工事
外壁そのものの止水性不足木造では特に注意。外壁側の対策が必要

とくに気をつけたいのが、木造など外壁に止水性がない建物です。玄関に止水板を取り付けても、壁のすき間から水が入りこんでしまえば効果は限定的になります。この場合、開口部の対策だけで完結させず、建物全体で水の経路を塞ぐ必要があります。

現実的な備え方として、次のような考え方をおすすめします。

  • 止水板で正面の開口部を守り、側面や勾配のある部分は土のうで補う
  • 排水の逆流が想定される場所には、逆止弁や排水ポンプを併せて検討する
  • 想定浸水深がハザードマップで1mを超える地域では、止水板だけに頼らず垂直避難の計画を立てる
  • 完全な防水ではなく、床上浸水を床下でとどめるという目標に置き換える

「完璧を目指せないなら意味がない」ということではありません。水が入る量を10分の1に減らせれば、復旧にかかる日数も費用も大きく変わります。被害をゼロにするのではなく、事業や暮らしを止めない水準まで下げることが現実的な目標になります。

止水板の耐用年数はどのくらいですか?

部位によって寿命が異なるため、分けて考えるのが正確です。本体と支柱はアルミニウム合金でできており、錆に強く長期の使用に耐えます。一方、止水性能を担うゴムには交換の目安があります。

部位材質耐用年数の目安交換の要否
止水板本体アルミニウム合金長期使用が可能破損時のみ
端部支柱・中間支柱アルミニウム合金長期使用が可能破損時のみ
止水ゴムEPDMゴム発泡体10〜15年劣化時に有償で交換

止水ゴムは幅30mm、厚さ10mmのEPDMゴム発泡体が使われています。10年を目途に状態を確認し、著しい劣化が見られる場合は交換してください。交換は有償ですが、本体をそのまま使い続けられるため、買い替えとは比べものにならない負担で済みます。

寿命を延ばすためのポイントを挙げます。

  • 日光や雨が当たらない屋内に保管する(紫外線がゴムの劣化を早める)
  • ゴムを圧縮しない状態で保管する(変形すると止水性能が落ちる)
  • 使用後は水道水で洗い流し、中空部分も流して十分に乾燥させる
  • 年に1度は点検し、ひび割れや硬化がないか確かめる
  • 泥や砂が付着したまま放置しない

保管の仕方しだいで、ゴムの持ちは大きく変わります。屋外に置きっぱなしにすれば10年もたないこともありますし、丁寧に扱えば15年以上使えることもあります。

なお、製品には1年間のメーカー保証が付いており、期間内の不具合には無償で修理と交換が行われます。保証期間の経過後も有償で対応してもらえるため、長期にわたって使い続けられる体制が整っています。

一人でも設置できますか?

多くの場合、可能です。脱着式アルミ止水板は1枚あたりの重量が軽く設計されており、特別な工具も必要としません。

サイズごとの重量と、想定される作業人数を整理します。

サイズ(高さmm×幅mm)重量想定人数
350×1,000約4kg1人
450×1,000約6kg1人
550×1,000約7kg1人
350×2,000約9kg1人
450×2,000約11kg1〜2人
550×2,000約14kg1〜2人

固定の方法もシンプルです。市販のダブルクリップで留める仕様、ノブボルトを締める仕様、ハンドルを回す仕様、マグネットで付ける仕様があり、いずれも工具なしで扱えます。設置にかかる時間は、大人1人でおよそ1分程度です。

土のうと比べれば、負担の差は歴然としています。1袋20〜25kgの土のうを何十個も運んで積み上げる作業には数十分から数時間かかり、高齢の方や女性だけでは必要な高さまで届かないこともあります。

一人での設置を前提にする場合、次の工夫が有効です。

  • 1枚あたりの幅を欲張らず、持ち運びやすいサイズに分割して発注する
  • 中間支柱を使い、広い間口でもパネル1枚を軽くする
  • 保管場所から間口までの動線に、段差や障害物を作らない
  • 設置の順番を決めて、パネルに番号を書いておく
  • 事前に一度組み立ててみて、所要時間を計っておく

ただし、間口が非常に広い現場や、2段積みで高い位置に載せる場合は、2人での作業が安心です。発注の段階で「誰が設置するか」を伝えておけば、それに合わせた仕様を提案してもらえます。

マンションや地下駐車場にも設置できますか?

設置できます。むしろこうした場所こそ、止水板の効果が発揮されやすい現場です。

鉄筋コンクリート造の建物は外壁の止水性が高いため、開口部を塞げば浸水を防ぎやすくなります。木造住宅のように壁から水が入る心配が少ない点で、条件としては有利です。

設置場所想定される課題対応の方向性
マンション共用部のエントランス日常の通行を妨げたくない脱着式で平常時は撤去
地下駐車場の入口スロープ間口が広く、水が集まりやすい中間支柱で連結、高さのある仕様
機械室・電気室の扉設備が水没すると被害が大きい優先度を上げて対策
地下の倉庫や書庫一度浸水すると復旧が困難逆流対策と併せて検討

地下空間は水が集まりやすく、いったん流れ込むと排水に時間がかかります。電気設備が水没すればエレベーターも止まり、復旧までに数週間を要することも珍しくありません。だからこそ、入口での対策が重要になります。

実際の施工事例としては、次のようなものがあります。

  • 個人宅のガレージ(三重県四日市市)
  • 公共施設の間口3.8m(東京都江戸川区)
  • 倉庫のエレベーター前、間口6.5m
  • 会社玄関の自動ドアまわり

止水できる範囲は高さ0.15〜1.1m、間口は0.5〜15m程度です。中間支柱で連結すれば3mを超える開口部にも対応できるため、駐車場のスロープやシャッターにも設置できます。

マンションの場合、管理組合での合意形成が必要になる点は押さえておきましょう。総会の日程から逆算すると準備期間が長くなるため、早めに見積もりを取っておくと進めやすくなります。

設置後のメンテナンスは必要ですか?

必要です。ただし、負担は決して大きくありません。年に1〜2回、10分程度の作業を習慣にしておけば十分です。

メンテナンスの内容を整理します。

実施する内容頻度の目安確認するポイント
使用後の洗浄使うたび水道水で洗い、中空部分も流して乾燥させる
製品の点検年1回以上止水ゴムの劣化、金物のゆるみ、変形の有無
設置訓練年1〜2回手順どおり組み立てられるか、所要時間
止水ゴムの交換10年を目途著しい劣化があれば有償で交換
保管状態の確認点検とあわせてゴムが圧縮されていないか、乾燥しているか

点検と訓練は同じ日にまとめてしまうのが効率的です。実際に組み立てながら各部の状態を確かめれば、一度の作業で両方を済ませられます。

メンテナンスを続けるための工夫も挙げておきます。

  • 消火器の点検や避難訓練と同じ時期に組みこみ、年間行事にしてしまう
  • 実施した日付を記録に残し、次回の目安にする
  • 担当者が交代するときは、手順書と記録をあわせて引き継ぐ
  • 泥や砂が付いたまま保管しない(ゴムの密着をさまたげる原因になる)
  • 気になる劣化を見つけたら、放置せず施工店に相談する

土のうであれば、毎年袋と砂を用意し、使用後は乾かして処分する手間が発生します。事業所では産業廃棄物として処理費用がかかる場合もあります。それと比べれば、年に数回の点検で済む止水板の負担は、むしろ軽いといえるでしょう。

まとめ

ここまで、止水板のデメリットを7つに分けて解説し、あわせてメリットや種類ごとの違い、そして解消のための対策までをお伝えしてきました。最後に要点を振り返ります。

デメリット解消の方向性
費用が高い補助金の活用、優先度の高い間口から段階的に導入
予算化・調達に時間がかかる出水期の3〜4か月前から動き出す
保管場所と方法に条件がある屋内でゴムを圧縮しない形で保管、動線も設計
運搬と設置の負担中間支柱で分割し、1枚あたりを軽くする
建物の構造で効果が出ない事前の現地調査で浸水経路を切り分ける
設置面の下地工事が必要発注前に床と壁の状態を確認する
設置訓練が欠かせない手順書を整え、年1〜2回の訓練を習慣にする

こうして並べてみると、止水板のデメリットはそのほとんどが導入前の準備で小さくできるものだと分かります。裏を返せば、準備を怠ったまま製品だけを選んでしまうと、費用をかけたのに効果が出ないという最悪の結果を招きかねません。

とくに強調しておきたいのが、次の3点です。

  • 止水板は完全な防水装置ではなく、被害を最小限にとどめる装置である
  • 効果を左右するのは製品の性能よりも、建物の構造と設置面が条件を満たしているか
  • 相談から使える状態になるまで3か月前後かかるため、動き出す時期が結果を分ける

近年は1時間に50mm以上の短時間強雨が、以前のおよそ1.5倍の頻度で発生しています。これまで水と無縁だった地域でも、下水の排水能力を超えた雨水があふれる内水氾濫が起きるようになりました。浸水被害はもはや、火災や地震と並ぶ経営リスクとして考えるべき段階に入っています。

「うちの建物に付けられるのだろうか」「そもそも対策が必要な立地なのか」といった不安は、専門家に一度見てもらえば解消できます。三恵工業では現地調査とご相談を無料で承っており、開口部の写真と間口のサイズをお送りいただくだけで、設置の可否と概算のお見積もりをご案内しています。全国の各地域から、即日〜4日以内にご回答が可能です。

一級建築施工管理技士が現地を確認し、止水板が必要な箇所と、逆止弁や排水ポンプなど別の手段で塞ぐべき箇所を切り分けてご提案します。地域によっては補助金を活用できる場合もありますので、費用面が気がかりな方もまずはご相談ください。

水害への備えは、雨が降り出してからでは間に合いません。次の出水期を安心して迎えるために、今日から一歩を踏み出していただければと思います。